>
>
2013年度・住宅市場動向調査について

弁護士ブログ

2013年度・住宅市場動向調査について

弁護士 野谷 聡子

2014(平成26)年11月28日、政府の2013(平成25)年度住宅市場動向調査の結果が発表されました。

調査結果はこちら
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001128202

今回は、その中から民間賃貸住宅に関する過去5年間の統計の傾向を見てみましょう。なお、統計はいずれも首都圏、中京圏、近畿圏における調査に基づくものです。

現に民間賃貸住宅に住む人(賃借人)がその賃貸住宅を選んだ理由(複数回答)としては、「家賃が適切だったから」が56.6%と相変わらず高い割合を示しました。これに対し、かつては家賃と同じくらい、あるいは、それ以上に重要視されていた「住宅のデザイン・広さ・設備等」や「住宅の立地条件」を選んだ人はいずれも減少し、それぞれ40.8%、45.6%となりました。

これは、賃貸住宅世帯の収入が減少していること(年収400万円未満の世帯が平成21年度は30.1%であったのが、今回の調査では42.9%となった。)や、居住人数1人の賃貸住宅が増加していること(平成21年度には29.0%であったものが、今回の調査では41.2%となった。)、高齢者のみの世帯が大きく増加していること(平成21年度には31.6%だったものが、今回の調査では51.9%となった。)とも関係していると考えられます。

また、民間賃貸住宅に住む、仕事を持っている人のうち、勤務先から住宅手当を受け取っている割合は、平成21年度の41.3%から今回の調査では26.3%と減少しており、長く続く不景気や近年の非正規労働者の増加等も影響していることが考えられます。また、勤務先から住宅手当を受け取っている人であっても、その額は平成21年度は平均46,114円だったものが、今回の調査では平均25,911円と、前年度(平成24年度:22,083円)よりは多少回復したものの、ここ5年で減少傾向を示しており、世帯の家賃負担が大きくなっている状況が見受けられます。

「家賃の負担感」に関する調査でも、「非常に負担感がある」(15.4%)、「少し負担感がある」(55.1%)という回答が、ここ4年間(平成21年度は質問無)で最も多くなりました。

このような賃借人の事情を反映してか、賃貸人が受領する敷金(保証金)、礼金の額も減少傾向にあります。賃貸人が受領する敷金は、平成21年度は「2か月分」が42.3%と最も多かったのに対し、今回は「1か月分」が45.7%と最も多くなりました。また、礼金の有無は、平成21年には55.9%が「あり」でしたが、今回の調査で初めて「なし」が過半数を占めました(平成25年度「あり」48.6%)。

以上のような賃貸住宅市場の動向から、賃借人の賃貸借に関わる経済的負担(賃金だけでなく、敷金、礼金等を含んだ出費の総額)に対する目は年々厳しくなっており、賃貸人の側もそれに伴う減額に応じざるを得ない状況があるといえるでしょう。

20141202_01
弁護士 野谷 聡子

ページトップへ戻る