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民法改正・解説コラム 第13回「民法改正と賃金請求権の消滅時効」

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民法改正・解説コラム 第13回「民法改正と賃金請求権の消滅時効」

弁護士 藍原 貴子

民法の債権に関する部分が大きく改正され、2020年4月より施行されています。これにより労働者の賃金請求権の消滅時効にも影響を及ぼしています。

民法には債権の消滅時効について規定がありますが、労働者にとって重要な債権である賃金請求権の消滅時効期間は労働基準法で定められています。もともと民法では賃金請求権については1年で消滅すると定められていましたが、労働者保護の観点から、賃金請求権については労働基準法によって、民法より長い2年の消滅時効期間が定められていました。

民法改正により、民法上の消滅時効期間は債権の種類を問わず、原則として権利を行使できることを知った時から5年、又は、権利を行使することができる時から10年に統一されました。

この民法改正と同時に労働基準法も改正され,賃金請求権の消滅時効について、「当分の間は3年」と経過措置が設けられているものの、「5年」に延長されました。これは2020年4月1日以降に支払期日が到来するすべての賃金が対象となります。裁判所が事業者に対して未払い賃金に加えて支払いを命じる付加金の請求期間についても、同様の期間に改正されています。

改正により労働者の保護が厚くなる一方、事業者は未払賃金の高額化というリスクを負うことになります。

経過措置の「当分の間」は改正法の施行から5年経過後の状況を勘案しつつ、今後検討が加えられるとされており、今後も注意が必要です。


弁護士 藍原 貴子

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