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瑕疵担保責任

弁護士ブログ

瑕疵担保責任

弁護士 仲世古善樹

築地市場の豊洲移転問題に関し、東京都議会百条委員会は、3月20日、石原元東京都知事の証人喚問を実施しましたが、その中で、「瑕疵(かし)担保責任の免除」ということが問題になっていました。

例えば、皆さんが、ある物を買ったところ、買った後に、買うときにはなかなか気付くことができないような欠陥が見つかった場合、どう思いますか。

何も法律を見ずに、普通に考えたとき、

  1. すぐに直すことができるようなものであれば、直すためのお金を払ってほしい
  2. 直すどころでない重大な欠陥の場合には、そもそもこの売買をなかったことにしたい

と言いたいと思うのではないでしょうか。

そのとおり、民法は定めています。

民法は、上記の「買うときにはなかなか気付くことができないような欠陥」を「隠れた瑕疵」と呼んだうえで、隠れた瑕疵が見つかったときには、それを知らないで買った買主は、売主に対して、損害賠償を請求でき(上記①)、もしその隠れた瑕疵によってもはやその物を買った意味がなくなってしまうような場合には、契約の解除ができる(上記②)と定めています(民法第570条、566条)。売主がその瑕疵のことを知っていたか知らなかったかは関係ありません。この、瑕疵のことを知っていたかどうかに関わらず、「損害賠償を請求される」あるいは「契約そのものを解除される」という売主の責任のことを「瑕疵担保責任」といいます。これは買主において、瑕疵を見つけてから1年以内に言うことが必要です。

買主にとっては、「当たり前の権利だ」って感じですよね。でも、一方で、民法は、この瑕疵担保責任を売主が負わない特約をすること(上記の「1年」という期間を短くすることも含む)を認めています。これが、「瑕疵担保責任の免除」です。買主にとってとても大事なこの権利を売主が負わなくてもよいとすることを、民法は、原則、自由に認めているのです。

100円200円の物だったら、諦めが付くかもしれませんが、豊洲の土地みたいに何百億という買い物なら大変です。ですが、どんなに高い買い物だろうが、例えば「何らかの瑕疵が発見された場合でも、売主は買主に対して一切の瑕疵担保責任を負わないものとする。」といった、こんな簡単な一文が契約書にあると、もはや買主は、売主に対して、上記①や②が言えなくなってしまいます。だからこそ、契約書は、丸く読んではならず、また、理解があいまいなまま締結してはダメで、隅々まで読んで理解したうえでないと締結すべきではないのです。

ここで、「そうであれば、売主は常に瑕疵担保責任を負わない特約を入れるのでは」、あるいは、「負わないとまでしなくても、極端に短い期間しか受け付けないことにしてしまうのでは」と思う方もいらっしゃるでしょう。

その通りです。そのために、法は、いくつかの歯止めをしていますので、一部を見てみましょう。

たとえば、民法自体が、その瑕疵を売主がもともと知っていた場合には、特約があっても瑕疵担保責任を負うとしています。知っていて言わないのは、それはズルいでしょ、ということです。

また、消費者契約法という法律は、事業者が消費者に物を売る場合には、瑕疵担保責任を全く負わないという契約条項を入れたとしても、その規定を「無効」、つまり何も効力を認めません(書いてないのと同じ)としますとしています。

更に、特に大きな買い物である新築住宅や新築マンションの購入については、中々欠陥が見つかり難いという場合も多いことから、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」という長ったらしい名前の法律が、売主が瑕疵担保責任を負う期間を、買主に引渡したときから10年間と定めています。これより短い期間の特約をしても、無効です。ただ、この「10年間」というが適用されるのは、とても重要な部分についての瑕疵に限定(「住宅の構造耐力上主要な部分」または「雨水の進入を防止する部分として政令で定めるもの」)されています。

もし、契約書の記載に理解し難い点や不安があれば、ぜひご相談ください。

弁護士 仲世古 善樹
弁護士 仲世古善樹

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