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法律 Q&A

札幌タイムスに掲載された原稿を若干手直しして掲載しています。顧問契約をしていない方からメールでご相談いただいても、原則としてお答えすることはありませんのでご了承ください。

親が存命中に相続放棄をしたいのですが?

私は、小さい頃に両親が離婚して母と一緒に暮らしてきたために、父親とは全く行き来がありませんでした。それが、先日、父親の消息が分かり、ある程度財産もあるようなのですが、父も再婚して子供がいるということで、私は父の財産を貰う気持ちは全くありません。

遺産がいらない場合には相続放棄という手続があるということですが、私が父の存命中に相続放棄をすることは可能でしょうか。

結論から申し上げますと、被相続人(本件ではお父様)がご存命中に相続の放棄をすることはできません。

お父様が亡くなった際に相続を受けたくないのであれば、その時点で相続を放棄すれば良いことになりますし、仮に相続財産ではなく借金を残して亡くなられたときにも、やはり相続放棄は被相続人が死亡した後しかできないというのが法律の規定です。早く相続放棄をして今後の心配の種を取り除いておきたいという気持ちもあるのかもしれませんが、残念ながら現在の制度上は無理です。

被相続人が存命の間は、相続人は将来その相続財産を受けることを期待するかもしれませんし、逆に債務を相続することを嫌がることもあるでしょう。ただ、この相続人の期待や嫌がる気持ちというのは具体的な権利ではなく、あくまでも期待や危惧でしかありません。相続財産についても被相続人の存命中は、被相続人自身の活動によって増減するものですから、それを、事前に放棄することを認めると将来思わぬ不利益を相続人に与えることがあることなどから、被相続人が存命中の相続放棄は認められないことになっているのです。

また、こうしたところで、相続放棄は、相続人が「自分のために相続が開始したことを知ったとき」から3か月以内に家庭裁判所に「申述」すれば良いので、知らないうちに相続放棄ができなくなっていたということはありませんから、相続人に特段の不利益を与えることもないでしょう。

なお、ご質問からは少し離れますが、相続権の放棄ではなく遺留分(法定相続分の2分の1について遺言等で多く貰っている相続人に請求できる権利)という権利であれば、裁判所の許可を受けて被相続人の存命中に放棄することはできます。(民法1043条)これは、農家などで、耕作地を長男に相続させたいと思ったときに、遺言をするだけでは他の子供たちの遺留分を侵害してしまうことがあるので、事前に他の子供たちが遺留分を放棄するだけの正当な理由(既にそれなりの財産を分与しているなど)を示して家庭裁判所の許可を受けることによって放棄することができるという制度です。

このように民法の条文で、被相続人が亡くなる前の遺留分の放棄が明文で定められていることから、そのような規定のない相続分については被相続人の存命中には放棄できないという解釈になっているのです。

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行方不明の兄の相続権は?

五十代の男性です。四つ上の兄がいますが、二十年ほど前に家を出て以来、行方がわからなくなっています。先日父がなくなり、母、私、妻、子ども(社会人と大学生)が、父の建てた家に住んでいます。

父は特に遺言状などを残しませんでしたが、兄の相続権はこの場合どうなりますか。また、何らかの手続きが必要でしょうか。

ご質問の趣旨は、お兄さんの所在が分からない状態で、亡くなってしまったお父様の遺産の処分をすることが可能か、可能とするとどのような方法をとることができるかということだと思いますので、その点についてお答えいたします。

お兄さんは、20年間行方不明ということですが、その状態への対処方法として、ひとつは住所地を去ってしまった方が財産の管理人をおかなかった場合ということで、不在者の財産管理人の選任を家庭裁判所に申立てる方法があります。この方法によると、家庭裁判所で選任された管理人がお兄さんの財産管理人として遺産分割の協議に参加し、遺産分割によって受け取った財産をその後も引き続き管理するということになります。

しかし、この方法をとると、生死も分からないお兄さんのために財産管理を続けなければならないということにもなりますので、より根本的な解決としては、お兄さんについて失踪宣告の申立をして、法律上は死亡したものとみなしてもらう方法があります。民法30条によって、「不在者の生死が7年間」明らかにならないときは、家庭裁判所に申立をして「失踪宣告」してもらうことができます。失踪宣告によって、前述の7年間経過のときに法律上は死亡したものをみなされますので、その後の相続手続はそのお兄さんが死亡しているという前提で進めることができることになるのです。その後お兄さんが生きていることが分かれば失踪宣告は取消されますが、遺産分割自体は有効で(相続人がお兄さんの生存を知っていた場合は別です)、現にお兄さんの相続分を侵害して取得した財産が残っている範囲でお兄さんに返還することになります。

質問から少し外れますが、仮にお父様が遺言を残していたとしても、お兄さんには遺留分という権利がありますので、権利関係をすっきりさせておくためには失踪宣告の申立をしておくことをお勧めします。

以上お答えしたことでご理解いただけたと思いますが、何も手続を取らなければ、20年前に失踪したお兄さんであってもお父様の死亡による遺産相続の権利はあることは変わらないということもご留意ください。

なお、不在者の財産管理人の選任や失踪宣告の申立をする際には、申立の添付資料としてお兄さんの戸籍謄本・戸籍の附票等を提出する必要がありますので、申立手続は法律の専門家に依頼することをお勧めします。

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正しい遺言の書き方は

まもなく70歳になる男性です。二人の子供も独立し妻(67歳)と二人暮しです。そろそろ自分の死後を考え、また、持ち家や多少の財産もあることから遺言状を用意しようと思っていますが、正しい遺言状の書き方について教えてください。

まず、遺言状によってできることの説明をいたします。遺言状は、作成することによって作成者の生前の意思を確定させ、遺言者の死後も同人を巡る権利義務をその意思に委ねることができる制度です。

遺言でできることは、相続分の指定や遺産分割方法を指定するだけでなく、第三者に遺産分割方法を委ねたり、相続開始後5年以内の期間であれば遺産分割を禁止することもできます。そのほかにも、婚姻外で生まれた子の認知や相続人の廃除、廃除の取消も遺言ですることができます。

そこで、具体的な遺言の方法についてご説明しますが、法律で認められた方式は、一般には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。(このほかに、緊急の事態になされた遺言や隔離された場所における遺言等特別な場合もありますが、ここでは省略いたします。)

このなかで自筆証書遺言は最も簡易な方法で、遺言状の作成そのものも秘密にできます。この場合には証人も必要なく、遺言者が自分で遺言の内容全文と作成日付及び氏名を書いて署名の下に印を押すだけで有効になります。(注意しなければならないのは、全て自書しなければならないということです。筆跡で本人が書いたものかどうかを確認するのですから、自分でワープロを打って作成したとしてもそれは無効です。)

このように自筆証書は簡便ではありますが、紛失したり、破棄されたり、更には偽造・変造の恐れもあるということを注意しなければなりません。

そこで、このような危険を回避するために、公証人に遺言を作ってもらったり(公正証書遺言)、遺言の内容を自書して署名・押印した遺言状を封入して遺言状に押印した同じ印で封印した上で証人二人以上の立会いのもとに公証人に自分の遺言であることを証明してもらう秘密証書遺言をするという方法もあります。

このように遺言の方法として認められている方法は3種類ありますが、公正証書遺言を除いては、自分で遺言の文章を考えて作成しなければなりませんので、その文章によって自らの意思が正確に表現されていないと、後日の紛争を防止しようとして作成した遺言が逆に争いの種になることがあります。従って、そのような危険を回避するためには、公証人のもとで公正証書遺言を作成するか、そのほかの方法で遺言をする場合でも、文章の作成を法律の専門化に依頼するのが良いと思います。(この場合には専門家の作成した内容を自筆で清書しなければなりません。)

これらの方式を守って作成された遺言は法的に有効なものとして、後日の紛争を防止することができますが、わが国の法律では定められた方式によらない遺言は法的には無効となり、その効力を法的に主張することはできませんので注意しなければなりません。(もっとも、法的に無効であっても相続人がその意思を尊重して遺産分割協議をすることは差し支えありませんし、むしろその方が望ましいともいえます。)

以上遺言の方式についてご説明いたしましたが、遺言は一度作成してもその後に別の有効な遺言を作成した場合には、新しい遺言と矛盾する範囲で前の遺言は無効になりますし、遺言状作成後に遺言の記載内容と矛盾するような行為をした場合には前の遺言を撤回したとみなされますので、遺言状を作成しようと思っても、これが最後と慎重になって機を逸することのないようにお考えください。

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音信不通だった親が亡くなると債務を引き継ぐのでしょうか

五十代の女性です。
13年前に離婚した夫との間には子ども(現在成人)が一人おり、離婚の際に私が引き取りました。先日その夫が亡くなりましたが、数百万の借金があるそうです。離婚したとはいえ、相続権のある子に返済の義務はあるのでしょうか。

相続の問題は分かりにくいようですが、実の親子であれば、両親が離婚して親権者でなくなった親が死亡したときであっても相続権があることは間違いありません。

そして、相続というのは、亡くなった被相続人の積極・消極全ての相続財産を引き継ぐものですから、お子さんは離婚したご主人の借金も相続することになります。

ただ、法の建前は親子であっても債務まで相続することを強要されるものではなく、自分の望まない相続は拒絶することができることになっていますので、被相続人が死亡して、相続人が「自分のために相続が開始したことを知ったとき」から3か月以内に、家庭裁判所に相続を放棄する旨の「申述」という手続きをすれば債務を支払う義務は免れます。申述の具体的な手続きは家庭裁判所にお問い合わせいただければ教えてもらえますが、提出書類の作成等について、難しければ専門家に相談することをお勧めします。

ご相談の場合も、お子さんは債務の相続をすることになりますから、債務返済の義務を免れたければ、別れたご主人が亡くなったことを知ってから3か月以内に相続放棄の申述をすれば良いことになります。

ただ、13年前に離婚したご主人ということですから、その生活状況も分かりませんので、闇雲に相続放棄をすると本来受けられたはずのプラスの相続財産を受けることもできなくなりますから、相続放棄をするか否かは亡くなった方の資産状況を確認してからにしたほうが良いと思います。

また、プラスの財産とマイナスの債務のどちらが多いかはっきりしない場合には、限定承認をするという方法もあります。これは、債務も相続するがその支払いの義務は相続によって得た積極財産の限度までであるという留保をして相続するもので、相続放棄と同じように「自分のために相続が開始したことを知ったとき」から3か月以内に家庭裁判所に「申述」する必要があります。

このように3か月以内に相続放棄又は限定承認の申述をしない場合は、単純に相続したということになりますので、債務を支払う義務を負うことになりますし、この期間内でも相続財産の処分などをした場合や、期間内に相続放棄・限定承認をしても、相続財産を隠したり個人的に使ってしまったり、家庭裁判所に提出する財産目録に相続財産の一部を載せなかったようなときにも同様に単純相続したとみなされますので注意しなければなりません。

なお、被相続人が亡くなったことは知っていたが債務があることを知らずに3か月を経過し、その後に債権者から債務の支払いを求められたような場合には、支払いの請求をされたときが「自分のために相続の開始があったことを知ったとき」とみなされて、そこから3か月以内は相続放棄等の手続きをできる場合がありますので、そのような事態になったときには弁護士にご相談をしていただくのが良いと思います。

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叔母の多額の借金を相続しない方法を教えてください

10年以上前に交際を絶った父方の伯母が、数千万単位の借金に苦しんでいるという噂を聞きました。伯母には両親もいくらか都合していますが、まったく返す気配がなく、ほかにも私たちの名を出して「弟(私の父)の家がたいへんだから」と嘘をつき、ほうぼうから借りていたようです。それが理由で付き合わなくなったのですが、借金が数千万円にふくれあがっているとは予想できませんでした。

我が家は、父が亡くなったため、現在母が1人暮らし。私は独立し、私の兄弟もそれぞれ家庭を持っています。

伯母はずっと独身で、子どもはおらず、別の伯母と2人暮らしです。将来彼女が亡くなることがあれば、私たちに借金が引き継がれるのでしょうか。そうならないための対策を知りたく思います。

伯母さんが数千万単位の借金を返済しないまま亡くなれば、その債務は相続人が相続することになります。法律で定められた相続人は、伯母さんに子供や親(あなたの祖父母)がいれば、その方たちが相続人ということになりますが、これらの人がいなければ伯母さんのご兄弟が法定相続人ということになります。ご兄弟が伯母さんより先に亡くなっている場合にはその子供がその代襲相続人ということになりますので、あなたやあなたのご兄弟もお父様の代襲相続人として伯母さんの債務を相続しなければならなくなる恐れがあります。(あなたのお母様は、伯母さんの相続人とはなりません。)

民法では、このようなマイナスの遺産相続を免れる方法として相続放棄という制度を定めています。被相続人が死亡した場合、何もしなければ当然に相続が開始し、プラスの財産もマイナスの財産(債務)も全て法定相続人が引き継がなければならないのですが、旧民法時代のように家族の不始末は家の責任という考えかたは取られていませんので、親族の債務であっても相続しない自由が各法定相続人に与えられています。

マイナスの遺産相続を免れる方法としては、相続放棄と限定承認という制度があり、伯母さんが相続人にとって必要な財産をもっているような場合には、そのプラスの財産の範囲に限定して債務も相続する限定承認という方法が有効ですが、ご質問のような場合には相続放棄してしまったほうが良いのではないかと思います。

相続放棄や限定承認は、自分のために相続が開始したことを知ったときから3か月以内に、亡くなった方の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄あるいは限定承認の「申述」(しんじゅつ)という申立をすることによって有効になります。

この3か月間は、通常は被相続人が亡くなったことを知ったときから開始しますが、債務がないと思って放置していたところに3か月経過後に相続人として債務の履行を求められた場合などには、その債務の請求を受けてから3か月以内に家庭裁判所に「申述」すれば期間内であったと認められます。しかし、この期間内に何もしなければ当然に債務も相続したことになりますので注意が必要です。

また、ご質問のような状況であれば、伯母さんが、勝手にお父様の名前で契約書に保証人として記名・捺印してしまっていることもあるかもしれません。もちろん、それだけでは保証債務を負担することはないのですが、その契約書を基にして債権者がお父様の相続人であるあなたたちに対して裁判を起こしてきたような場合に、関係がないからと思って放っておくと請求が認められて確定してしまい、争いようがなくなってしまう恐れがあります。このような場合に限らず、裁判所から書類が来たときには絶対に放置せずに内容を確認して、その趣旨が分からなければ専門家に相談するようにしてください。

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複数の賃貸マンションがある場合の相続について教えてください

父は現在6戸のマンションを所有して、それぞれ賃貸しています。その父が、最近体調を崩して入院したのですが、病院からは癌の宣告を受け、後1年くらいしか持たないのではないかと言われています。

仮に、父が死亡したときの相続関係が分からないので教えてください。家族は、祖父(父の父親)、母、私、兄、弟です。

ご質問の趣旨は、お父様が亡くなられた場合に、その父、妻、子供3名の相続関係をお知りになりたいということだと思いますので、まず、法定の相続分からご説明します。

民法は、共同相続の場合の法定相続分を法律で規定していますが、その基本的な考え方は、妻には必ず相続権があるということと、妻以外は、子、親(親がいない場合は祖父母)、兄弟という順番に、先順位の相続人がいない場合に限って相続権が発生するということです。ですから、ご質問の場合には、妻であるお母様と、子であるあなたを含めた3名が相続人となり、御祖父様には相続権はないということになります。

そして、それぞれの相続分はお母様が、お父様の相続財産の2分の1、お子様たちが残った2分の1の3分の1ずつなので、相続財産の6分の1をそれぞれ相続するということになります。

この場合、相続分をどのように取得するかについてですが、相続開始後に遺産分割の協議をして、その結果を遺産分割協議書にまとめれば、その内容に従って不動産の登記もできますが、遺産分割の協議がまとまらない場合には、とりあえず、不動産については各自の法定相続分に従って登記をするという方法もあります。なお、預金や貸金などの債権については、遺産分割協議をしない場合にはそれぞれが法定相続分に従って相続したということでその請求をすることができるのが民法上の原則なのですが、実際に預貯金の払い戻しを受けるためには、相続人全員が金融機関によって決められた書類に署名捺印して提出しないと手続を進めてもらえないというのが実際のようです。

また、具体的なマンションの遺産分割については、マンションのどの部分を誰が相続するということが決まれば、その相続人がその後のマンションの貸主になり、賃料も取得することができます。相続関係が決まるまでに発生した賃料については、遺産分割協議がまとまるまでに発生した分は、上記の法定相続分にしたがって分割されることになり、その後の遺産分割協議の結果によって影響を受けないというのが最高裁判所の判例です。遺産分割協議後は、ここのマンションを相続した方に賃料を受け取る権利があることになります。

以上が法定の相続関係に関する説明ですが、お父様のほうで、ご自分の意思を明確にして後々のトラブルをできるだけ少なくしたいということであれば、遺言によって相続関係を明確に指定しておいたほうが良いでしょう。

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内縁の夫が亡くなったときの権利関係は

母の友人が夫を亡くしました。
旦那さんは80歳代だったのですが、実は入籍しておらず、5年間ほど同居していただけとのこと。しかも、いわゆる男女関係もなく、どうやらただ「世話をしたくて」一緒に暮らしていたといいます。

このような場合、彼女は「内縁の妻」と言えるのでしょうか。相続など、どういう扱いになるのか気になります。なお、彼女に戸籍上の夫はいませんが、男性は20年以上前に前妻と事実上離婚していたということですが、籍は入ったままで、前妻のもとに子どもが1人います。

 

内縁関係については、法律上の要件が定められているわけではありませんが、届出を欠いてはいるものの、社会通念上夫婦の共同生活と認められる事実関係があり、かつ、このような関係を成立させようとする当事者間の合意があれば、婚姻に準ずる「準婚関係」として保護するというのが、一般的な考え方です。

ご質問の場合には、その同居の実態が「社会通念上夫婦の共同生活と認められる事実関係があり、かつ、このような関係を成立させようとする当事者間の合意」があるといえるかがまず問題になりますが、残念ながらご質問だけからは分かりかねるというお答えしかできません。単に一方的に「世話をしたくて」同居していたということであれば、内縁関係といえないという結論もありうると思います。

また、仮に、法的に保護される内縁関係だったとして、相続の手続上ご相談の女性が保護されるのかという点ですが、現在の法制度上は、内縁の配偶者には相続権は認められません。内縁の配偶者が亡くなった場合に、その収入・財産に依存していた残された内縁配偶者を保護する制度は、年金受給権などに関しては個別に立法されていることもありますが、相続に関してはそのような制度はありません。

亡くなった方に法定相続人がいない場合には、遺産分与(民法958条の3)という制度があるのですが、ご質問の場合には、籍の入ったままの前妻と実子がいるというのですから、この制度の対象にもなりません。

内縁解消の際には、その共同生活中に築いた財産の分与を求める請求権があるといわれていますので、一方内縁配偶者の死亡の際にも財産分与を認めるべきという考えもありますが、最高裁(H12.3.10決定)はこの考えを否定していますから、実際に救済を受けることは難しいということになります。

ご質問のような境遇の女性が保護されるためには、内縁配偶者の生前にきちんと遺言によって財産を遺すことを明らかにしておいてもらう必要があったのです。内縁というその実体を公的に確認することが難しい状態を前提とするため、遺言のように明確な意思が表示されたものがなければ、法的に保護されることは困難というのはやむを得ないのではないかと思います。

以上ご説明したとおり、ご質問の女性が相続の関係で保護される可能性はほとんどないということになります。

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