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法律 Q&A

札幌タイムスに掲載された原稿を若干手直しして掲載しています。顧問契約をしていない方からメールでご相談いただいても、原則としてお答えすることはありませんのでご了承ください。

ある時払いの条件で貸したお金を返してもらいたいのですが

職場の部下が「困っている」というので、半年前に50万円貸しました。その際、口約束で「ある時払い」でいいよ、と言ってしまったのですが、先月になって私がリストラされてしまい、生活が苦しくなりました。

予想外のことだったので「少しでいいから返済を」と頼むと「いつでもいい」といったはずでしょうと開き直り、返してくれません。携帯電話にも出なくなったので、やむなく職場に出向いて直接言ったり、彼の家に電話したりしたのですが逆ギレされて「そんな『取り立て』みたいなことは違法だ。やめてくれ」と言います。口約束で「いつでもいい」と言ったとはいえ、限度があるのではないでしょうか。

また、本当に職場や家庭に「取り立て」に行くのは違法なのですか。逆に訴えられるのは厭です。

ご質問のように、「いつでもいい」といった以上、「返せ」といっても相手が開き直ってしまえば返さなくても良いということになれば、お金をあげてしまったのと同じことになり、貸しただけのはずのあなたにあまりにも酷な話になってしまいます。

それでは、お金を貸す際に「いつでもいい」という条件で貸したことの法的な意味はどうなるのかという点を検討してみたいと思います。この「いつでもいい」という意味は、より整理して表現すると「あなたが返したいと思うときに返してくれれば良い」という趣旨で貸したと考えられます。このような返済条件は法律的には「純粋随意条件」といい、債務者の意思のみによって返済の条件が成就するという契約ですから、その契約は無効というのが法律の規定になっています。(民法134条)従って、あなたが部下の方に50万円を貸した契約は、法律上は無効な契約ということになります。

それでは法律上無効の契約に基づいて50万円を相手に交付した場合、その50万円はどうなってしまうのかということですが、無効の契約は最初から法律上の原因が無いことになりますので、このお金は借主にとって不当利得となり、民法703条に基づき、お金を受け取った側は、不当利得の返還義務を負うことになります。そして、同条には、返還の範囲について「その利益の存する限度」と規定されていますが、不当利得として金銭を取得した場合は、通常はその利得は現存するというべきであり、現にその金銭が存在せず、代わりの財産を使ったという事情も存在しないという特別な事情が無ければ、50万円を返還しなければならないということになるでしょう。ご質問の場合も、「困っている」といわれて50万円を貸したというのですから、あなたからこのお金を借りられなくても外から調達して何とか支出したという事情が推認されますので、不当利得として50万円の返還を受けることは可能という結論になるでしょう。

なお、不当利得の返還の場合には、当初の「いつでもいい」という約束自体が無効になるのですから、請求をした場合に「いつでもいい」と言ったじゃないかという抗弁は通らないことになります。

本件を法的にひも解くとこのようになります。

また、あなたが職場に直接行ったり、自宅に電話を掛けたりする行為が違法かどうかということについてですが、あなたには、相手にお金を請求する権利がありますから、電話を掛けたり、電話に出てもらえないために職場に直接行って「お金を返して欲しい」と言うことは原則として違法ではありません。しかし、わが国では自力救済は禁止されていますので、相手方が明確に返済を拒絶する意思を表示したような場合には、裁判所に申立をして法的に回収を図るべきです。債権者であったとしても、その回収のための手段によっては、逆に不法行為として損害賠償を請求されたり、恐喝や業務妨害として刑事罰を受けたりすることもあります。

ご質問の場合のように、かなりこじれてしまっているときには、「それでは法的に請求させてもらいます。」とだけ伝えて裁判所に少額訴訟等の申立をするのが良いと思います。

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取引先は倒産したが社長は資産がありそうな場合の売掛金の回収について

取引先から売掛金が回収できません。相手の社長は会社には何もないので支払えないと言っていますが、少し前まではかなり手広く仕事をしており、同じ社長が経営している別の会社は普通に仕事をしていますし、社長自身も立派な自宅に住んでいます。

何とか回収する方法はないのでしょうか。

取引先の会社が株式会社や有限会社であれば、その会社自身に資産がなければいかに社長や関連会社に資産があったとしても、支払を受けられないというのは、会社法の原則です。

しかし、社長が、会社の資金を正当な理由なく社長個人や関連会社に移したりしていたのであれば、移転した資金を会社に戻させることはできるかもしれません。ただ、この資金の移転については、会社の内部のことなので、社外にいる人間がその事情を把握するのは困難ですから、そのような場合には、あなたの方から取引先の会社に対して破産の申立をして、破産管財人に調査をしてもらうという方法があります。

ただ、この方法は、申立をする際に申立人が管財人の報酬や手続費用に充てる破産予納金を納める必要がありますので、実際に不正な資金の移転がなければ、その費用は全くの持ち出しとなってしまいます。また、回収した資金は、申立人だけでなく、その会社の総債権者に対する配当の財源となりますので、実際に配当として受け取れる額が売掛金の全額になることはないと考えた方が良さそうです。

もう一つ方法として考えられるのは、相手の会社が現在の支払い不能の状態に至った事情として、社長の経営責任を追及するという方法です。商法266条の3 はその1項で「取締役がその職務を行うに付き悪意又は重大なる過失ありたるときはその取締役は第三者に対してもまた連帯して損害賠償の責に任ず。」と規定して、取締役がその職務を行う際に故意又は重大な過失で会社に対する義務に違反し、その結果第三者に損害を負わせた場合には、その取締役は第三者に対しても損害賠償責任を負うと定めており、同様の規定は有限会社法にもあります。(有限会社法30条の3)

この条文を利用すると、社長が会社の取締役の業務を著しく怠り、あるいは故意に会社の資産を他に移して会社の経営をおかしくしたということであれば、社長個人に対して損害賠償を請求できる可能性もあります。

いずれにしても、このような請求をするに当たっては、会社の内部の事情をある程度分かっていないと難しいところがあるので、事前に十分な情報収集が必要になるでしょう。

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