札幌タイムスに掲載された原稿を若干手直しして掲載しています。顧問契約をしていない方からメールでご相談いただいても、原則としてお答えすることはありませんのでご了承ください。
不動産関係
欠陥住宅
私は、建売住宅を購入しましたが、新築であるにもかかわらず、購入直後から、家の近くを車が通行すると家が揺れ、外壁に多数の亀裂が生ずるといった状態でした。建築士に調査を依頼したところ、建築確認申請に用いる設計図書と実際の施工では、構造的に大きく異なることが分かりました。
建築確認申請書の工事監理者欄には、一級建築士の氏名が記載されており、且つ、自らを工事監理者とする旨の選定届が建築確認申請書の添付書類として提出されていました。そこで、その建築士に事情を聞くと、建売住宅の建築・販売業者から依頼されて建築確認申請に用いるための設計図書の作成をし、建築確認申請手続の代行をしただけで、工事監理はしていないとのことでした。
この建築士には責任はないのでしょうか。
責任追及できます。
最高裁判所は、設問のような名義貸し監理者について、建築確認申請書に建築士が実体に沿わない記載をしたのであるから、自らが工事監理をしないことが明確になった段階で、着工前に建築・販売業者に工事監理者の変更の届出等の措置を執るべき法律上の義務があり、この義務を履行せずに放置した場合には不法行為に基づく損害賠償責任を負うものと判断しました(平成15年11月14日判決)。
その根拠として、建築士には専門家としての特別の地位(建築士でなければ、原則として、設計、工事監理をしてはならない)が与えられていることがあげられています。
以前は、名義貸し監理者は、監理契約を結んでいないのだから責任を負わないとの主張がなされることが多く、その主張を認めた裁判例も多数ありましたが、今後は、そのような主張はできないことになります。
マンション問題 その1
私は、マンション管理組合の理事長です。管理費を長期滞納している人がいるのですが、所在不明で困っています。登記簿謄本を調べたところ、物件には抵当権は付いていません。どうしたら、いいでしょう?
管理費請求権の消滅時効期間が5年ということもあり、のんびりしていられません。
滞納管理費の回収方法は、滞納者が物件に担保(抵当権)を設定しているか否かで異なります。
担保の設定がない場合には、競売をすればよいのです。管理費には、先取特権がありますから、裁判を起こさなくとも競売できます。競売の購入代金額が滞納管理費額に満たなくても、競売で購入した人は、管理費の支払義務を負いますから、この購入者から回収することができます。
競売の場合、裁判所に予納金(札幌の場合、50万円が相場です)を納めなければなりませんが、その大部分は共益費用として配当(第1順位)という形で戻ってきます。
問題は、滞納公租公課がある場合で、滞納管理費を担保している未登記の一般先取特権は公租公課に劣後するので、この場合には、配当が受けられない場合もでてきます。
マンション問題 その2
上記問題と同じ管理組合の理事長です。物件に抵当権が付いている場合には、どうしたら、いいでしょう?
担保の設定がある場合には、Q1のように管理組合が先取特権に基づく競売の申立をしても、配当が組合にこない場合、つまり、物件の売却代金が、共益費用と抵当権者への配当で終わってしまう場合には、裁判所は手続きを進めることなく、無剰余であることを理由に、手続きを取り消してしまいます。
そこで、まず、抵当権者と連絡をとり、抵当権者に競売の意思があるか否かを確認する必要があります。もし、抵当権者に競売の意思があるのであれば、管理組合としては、自ら手続きをとる必要はありません。
問題は、抵当権者に競売の意思がない場合です。この場合は、従前は、打つ手がないと考えられてきましたが、最近になって、滞納事案に関して区分所有法59条の適用を認め、且つ、競売に関し無剰余取消を否定する高等裁判所の判例が出ています。このことを正確に説明すると難しくなるので省略しますが、要は、まず、裁判を起こして競売を申し立てる権利を取得し、次に、競売申立をするという二段階の手続きにより長期滞納者に明渡をさせることが可能となるということです。
この手続きを利用することにより、長期滞納事案を解決することを検討することになりますが、勝訴の見込み、集会の手続き等はかなり専門的なことなので、マンション問題を数多く手掛けている弁護士に相談する必要があります。
貸した家に知らない者が住んでいたら?
改正担保・執行法
ある人に家を貸したところ、そのうち賃料が支払われなくなってしまった。行って見るとどうも貸した人ではない人が住んでいることが分かったが、誰かは分からない。こんな場合、貸主とすれば当然契約を解除し、さらに現に住んでいる人を追い出したいと思うにちがいないでしょう。そうできなければおかしい状況ですが、しかし、実はことはそう簡単ではありませんでした。
改正前の保全法では、現に判決により氏名等を特定された人に対してしか明渡しの強制執行ができないものとされ、現に占有している者がどこの誰かが分からない場合には、まず賃借人を相手に、現状を変更するなという仮処分を行い、その手続きにおいて現に住んでいる占有者をはっきりさせる必要がありました。
従って、もし賃借人に対して仮処分を行い、現に占有している者がAだと分かっても、その後意図的に占有者がBに入れ替わってしまった場合には、またBに対する仮処分をやり直さなければいけませんでした。もし、その後も次々に変わるようなことがあれば、事実上お手上げ状態となります。
今年4月1日から施行された改正保全・執行法は、占有移転禁止の仮処分、不動産明渡しの手続きにおいて、相手方を特定することが困難である場合に、相手方を特定しないで発令することができることとしました。
これに併せて、不動産に在る者に対する執行官の質問権も、質問に応じない者に対しては刑事罰を課すこととして権限を強化されました。
また、従前建物明渡しにおいて、建物内の動産については、未払い賃料債権等の判決によって、別途動産執行を行うことが通常でしたが、改正執行法は、明渡執行に付随して建物内の動産も売却できるようになりました。
このように、不法占拠者に対する明渡しの手続きが容易化された一方で、明渡しの執行においては、従前実務上行われてきた催告の手続きが明文化され、明渡しはその催告から1ヶ月後とされ、多少の猶予が与えられることとなりました。
ペットを購入しようと思っています。どんなことに気をつけたら良いですか?
コンパニオンアニマルとして家族同様の愛情を注がれるペットは、法律上「物」として扱われます。
ですから売買契約で大切なものを買うときと同じ注意が必要です。
具体的にはどのような点に注意すべきですか?
ペットが病気であったり、先天的な欠陥を有していないかどうかを売主に確認するべきです。また仮にペットにそのような病気や欠陥があった場合に、売主がどのような対応をしてくれるのかも確認しておくべきでしょう。
また血統書付きのペットを買うときには、血統書がいつ交付されるのかを確かめる必要があります。
ペットを買うときに契約書は必要ですか?
統計によると契約書を交わしているペットの売買は全体の15%に過ぎないようです。売買契約では売主と買主との間で売り買いについての合意が成立すれば良いので、契約書を作る必要はありません。
ただ、A2のように病気や欠陥に対する対応や血統書についての取り決めを確かなものにするためには契約書を作ることが望ましいと言えます。
買ってきた仔犬が病気のようです。他の犬に代えてもらうことはできませんか?
家に連れてかえって間もなく病気を発見したような場合には、売主は売買契約に従った履行をしていないので、「完全履行請求権」の内容として病気に感染していない仔犬と交換してもらうことを請求することができます。
ただ、かなりの日にちが経っている場合には当事者間の公平の観点から、代わりの仔犬を請求することはもはや出来なくなる可能性が高くなります。
代えてもらえないときには何も請求できないのですか?
病気という欠陥を治すことを請求することが考えられます。これが瑕疵修補請求権と言われているものです。
具体的には、売主に対して、「仔犬の病気を治せ」と請求することになります。
自分で獣医さんに診てもらって治した場合、治療費を請求できますか?
その治療が通常の治療であり、特に高額なものでない限り治療費は債務不履行による損害賠償として請求できるものと考えられます。これは病気にかかっていない仔犬を引き渡すという義務を怠った売主の債務不履行から通常生じる損害と考えられるからです。
通常の治療であれば、治療費が購入価格より高くなっても請求は可能ですが、特別な治療をして高額なものとなった場合には、その治療費は特別な場合に生じるものとして、売主が予測し得るものでない限り請求は認められないことになります。
「売主はペットが病気に感染していても一切の責任を負わない」ということが契約書に書いてありましたがこれは有効なのですか?
売主がペットが病気であることを知っていながら売った場合には、代わりの犬を引き渡す義務や病気を治す義務を免れることはできません。しかしそのような事情がない場合には、契約自由の原則から考えてその条項が有効なものとされることが多いと思われます。ただ、買主にペットの病気や欠陥の見分け方についての知識がないことが一般的であることを考えれば、そのような条項が定められていても買主は拘束されないと考えることも可能です(例文解釈)。具体的な売買の実情を見て判断するしかありません。
賃貸借契約の保証人は何時まで責任を負うのですか?
前の職場で部下だった知人に「3年だけ」と頼まれ、賃貸住宅の保証人になっていましたが、先日期限が過ぎて、いつのまにか契約が更新されていたようです。すでに元の部下とはあんまり行き来がなくなっていますし、もう保証人でもないだろうと思うのですが、今後も保証し続けなくてはいけないのでしょうか。
ご質問の趣旨は、当初3年間と期間を定めた賃貸借契約の保証人になったが、期間満了の際に契約が更新された場合に、ご自分の保証人としての責任はどうなるのだろうかということだと思いますので、以下に賃貸借契約と保証人の責任の関係についてご説明いたします。
建物の賃貸借契約について、期限が来たときに、家主と借家人が話し合って契約を更新させることを合意した場合は、その賃貸借契約は合意の内容に従って更新されます。通常、このような場合には新たな契約書が作成されますが、その契約書に保証人として署名しなければ、更新前の契約の保証人としての責任は期間満了によって終わったと解することができると思います。
しかし、借家契約に期間がある場合でも、家主がその期間の満了の1年前から6か月前までの間に更新拒否に関する通告をしなかったときは、従前の借家契約と同一の条件で、契約が更新されたものとみなされます。(借地借家法26条1項)家主が上記の通告をしても、期間満了後引き続き借家人が借家に居住し、これに対し家主が直ちに異議を述べなかった場合も同様とされます。(同条2項)
また、賃貸借契約が更新された場合、この契約上の担保については、民法に「前賃貸借ニ付キ当事者カ担保ヲ供シタルトキハ其担保ハ期間ノ満了ニ因リテ消滅ス但敷金ハ此限ニ在ラズ」(民法619条2項)と規定されているだけで、借地借家法にはこのような明文の規定はありません。賃借人が保証人を付けるというのも法律上は担保の提供と同視されるのですが、借家契約の場合に更新後の保証人の責任がどうなるのかについて学者の見解も分かれていました。しかし、平成9年の最高裁判決は、「特段の事情のない限り、保証人は更新後の契約にも引き続き保証責任を負うという合意をしたものと解するのが相当」という判断をしました。また、賃貸住宅業界でも、更新の際に賃貸借条件の変更が問題にならない場合には、改めて保証人の承諾などを取らず、当然保証人の責任が更新後の契約にも引き継がれるものとして処理されているようです。
このようにご説明すると、ご質問の場合には絶対に保証債務を免れることができないのかと思われるかもしれませんが、先ほどご紹介した最高裁判決では、賃貸借契約の更新の場合に、必ず保証人の責任が引き継がれるとまでは言っていません。「特段の事情のない限り・・・と解するのが相当だ」と含みのある表現で、更新後の契約について責任を負わない場合があることを示唆しています。つまり「特段の事情」があれば話は別だとしているのです。例えば、保証人が保証するときに、家主に対して「私はこの契約の期間だけ保証人になりますが、更新後までは責任を負いませんよ」と明言している場合には更新後の契約について保証人の責任を負わされることはないでしょう。(借家人だけに明言していてもそれだけでは不十分です。)
また、当初借家契約が締結されたときには、借家人と保証人とのあいだに親交があり、そのために保証がなされたけれども、更新時に至り、両者の関係が悪化して第三者から見ても保証人になることがあり得ないという事情を家主の方でも承知していた場合などには、結論は微妙ですが、保証責任を否定する「特段の事情」があるといえるかもしれません。
また、ご質問のように既に更新された後であっても、更新の際に保証契約更新の意思確認もされていないのですから、自分は「保証契約の更新に応ずる意思はない。」という明確な意思表示をしておく(内容証明郵便で通知をすることが有効です。)ことによって、これまで発生している分はともかく、今後発生する債務については保証責任を免れる可能性があるものと思われます。前述の最高裁の判決は保証人の通常の意思として更新に応ずるであろうということで保証人の責任を認めているのですから、通常の意思と異なる明確な意思表示をしておくことによって、その後の責任を免れることができる可能性はあるでしょう。(ただし、この点については、既に更新によって同一内容の契約が成立しているので一方的に責任を免れることはできないという考えも成り立ち得るところで、意見が分かれるところだと思います。)
いずれにしても、あなたの方で保証を続ける意思が全く無いというのであれば、それによって完全に保証責任を免れられるかという法的効果の点はともかく、その後の保証債務を免れる可能性はありますので、「保証責任負う意思はない。」という明示の意思表示をしておくことが良いでしょう。










