札幌タイムスに掲載された原稿を若干手直しして掲載しています。顧問契約をしていない方からメールでご相談いただいても、原則としてお答えすることはありませんのでご了承ください。
その他
恩人から借金を申し込まれたけれども
若いころ世話になった人から、お金を貸してくれと言われました。
ずいぶん前から失業中で「生活費に事欠いて」とのことなのですが、希望の金額が小さくないので、ほかに借金でもあるのではないかと思います。
悪い人ではないので返済は大丈夫だとは思いますが、こちらも生活が楽なわけではないし、貸した後のトラブルも避けたいので、何か念書のようなものを交わしたほうがいいだろうと思っています。万が一のことも考えると、貸す時にどういうやり取りをしておけばいいでしょうか。
ご質問の内容を読ませていただきましたが、相手の方がいかに良い人であったとしても、返済のための資金を用意できなければ、あなたに対して約束どおり返済をしてもらうことはできないということをまず考えるべきではないでしょうか。
失業中で生活費が不足しているということだけであれば、とりあえず当面の生活費を用立てれば良いはずなのに、希望の金額が小さくないというのは、おそらくは外の債権者に対する返済に充てる目的だと思います。
そのような事情を前提として、あなたがお金を貸す際の留意事項ということですが、相手に支払能力があるのであれば、返済の約束をしたうえで、支払えない場合には強制執行を受けることを受諾するという内容の公正証書を作成してもらうのが一番良いのですが、本件では、仮にそのような書類を作成したとしても返済を受けられる可能性は低いと思いますので、支払時期とその方法を明記した念書あるいは借用書を書いてもらうことで良いのではないかと思います。
ただ、実際に念書を差し入れてもらったとしても、上記のように回収可能性は極めて乏しいと思いますので、お金を貸す際には、内心では返してもらえなくても仕方がないという気持ちでいなければならないと思います。
若いころお世話になったことに何とか報いたいという気持ちは良いのですが、そのことで自分自身の生活が成り立たなくなるのは本末転倒だと思いますので、返してもらえなくてもやむを得ないと思える範囲でお貸しすることにすべきだと思います。
失踪した知人に貸していた物をアパートの大家から引き渡してもらいたい
資格試験をめざす知人に大量の本を貸しました。
半年ほど経ち、試験も終わっているはずなのでもう返してくれるだろうと思い訪ねたら、しばらく前から行方がわからず、家賃も振り込まれていないとのことでした。
どうやら貸した本も中にあるようなのですが、大家さんにかけあっても「いくら大家でも無断では入れない」と、鍵を開けてくれません。もし彼が失踪したとして、本はいつ返してもらえるのでしょうか。連絡を断って2か月以上ですが、まだ待たなくてはいけないのでしょうか。貴重な書籍もあるので、手放したくありません
ご質問の事案では、二つ難しい問題があります。
一つは、あなたが直面している大家さん自身が賃貸中の居室に勝手に立ち入ることができないために中を確認できないという問題で、もう一つは、仮に部屋の中にあなたの貸した書籍が存在していることが確認できたとして、大屋さんからあなたにその書籍を簡単に引き渡してもらえるかという問題です。
最近の賃貸借契約書には、入居者が居室を数か月留守にして、賃料も支払わない場合には、無催告で賃貸借契約を解除して中の動産についても家主の処分に任せるという条項が入っているものもあります。このような契約書の規定があれば、大家さんの協力を得られれば中の書籍を返してもらうことができるかもしれません。しかし、このような規定がない場合には、大家さんといえども勝手に賃貸中の居室に立ち入り、中の物を入居者に代わって持ち主に返すことができるかというと、法的には難しいということになりますので、その場合には大家さんが訴訟等の手続きによって入居者を強制的に退去させることができるようになるまで待たざるを得ないでしょう。
また、本件では、大家さんが部屋に立ち入れたとしても、書籍があなたのものであると認めて返してくれるかどうかということについても難しい問題があります。大家さんとしても、書籍を勝手に渡してしまったということで後から入居者の方からクレームを付けられることは嫌でしょうから、もしもそのようなことが起こった場合には、あなたの方で全て責任を持って対処するというような念書でも差し入れることによって、何とか了解してもらうというような方法しか取れないのではないでしょうか。
放置自動車を処分する方法は?
札幌市内の町内会の役員をしています。
昨年12月中旬ごろから町内会の空き地の道路沿いに赤いスポーツカータイプの車が止めてありました。近くの人が止めてあるのかなと思っていましたが、雪が降ってもそのまま放置されており、雪に埋まったままの状態が続いていました。雪が解けて車が姿を表したところ、タイヤ4本がなくなっており、屋根がつぶれていて車としては使える状態ではありません。
持ち主が片付けるだろうと思っていたのですが、6月に入っても一向に撤去される様子はありません。近くの家の人からも苦情が出てきており、役員会でも議題になりました。このまま放置しておくわけにはいかないので持ち主に連絡して撤去してもらうことも検討したのですが、車の所有者が誰なのか分かりません。警察にも相談しましたが、勝手に撤去するわけにもいかないとのことでした。
この車が原因で誰かがけがをしたり、事故でも起きたりしたら大変です。町内会の役員会では、この先、放置したままにはできないので、こちらで撤去してはどうかとの意見が出ています。しかし、持ち主が分からないとはいえ勝手に処分して、あとでトラブルにはならないのでしょうか。また、こちらで撤去したとして、もし所有者が分かった場合には撤去費用は請求できるのでしょうか。さらに、この車が原因でけがなどしたら、治療費も請求できるのでしょうか。
放置自動車の問題は、全国の自治体で頭を痛めているようで、条例を制定している自治体もありますが、札幌市はまだ条例制定には至っていないようです。そうすると、条例がないということを前提にどのような対処をできるかということを検討しなければなりません。
空き地の道路沿いという場所がどういう場所かという問題もありますが、警察に相談しても撤去してもらえなかったということは、駐車禁止区域ではないということでしょう。(駐車禁止区域の放置自動車であれば、警察の方でレッカー移動することが可能です。)
そしてまず検討する必要があるのは、質問の放置自動車にナンバープレートが付いているかどうかです。ナンバープレートが付いていれば、陸運局で登録名義人を調査することが可能ですから、その名義人に対して撤去を求めることができるでしょう。仮に、名義人が任意に撤去に応じない場合にも、名義人を相手に訴訟を提起することによって、強制的に撤去することは可能です。
ただ、問題なのは、このような訴訟を提起できるのは、撤去車両の周辺住民(町内会)ではなく、土地の所有者であるという点です。土地の所有者が所有権に基づく妨害排除として訴訟を行うことになるのです。また、撤去費用についても、車の名義人が任意に履行しない場合には、撤去を求める側で予納金として支払う必要があり、相手方に資力がなければその回収も困難になるということもあります。
逆にナンバープレートがない場合であれば、訴訟を提起したくてもその相手方が特定できないということになります。このような場合は、法的に有効な解決策というのがなかなか見出せず、各地の自治体で条例が制定されているのも、そのような事態を合法的に処理するための法規範が必要だからにほかなりません。
ご質問の場合にも、条例が制定されるまで待てるのであれば問題はないのですが、それが無理なようであれば、最後の手段として勝手に廃棄してしまうことを選択せざるを得ないかもしれません。ただ、この場合には、後日、車の所有者と称する人物から、車を勝手に処分されたとクレームが出る心配が全くないとはいえません。日本の法律は、如何に相手方が違法なことをしていても、自力救済を認めてはいませんので、車を勝手に処分する行為が民事上の不法行為として損害賠償請求の対象となるばかりでなく、器物損壊として刑事上の問題に当たる可能性もあります。
もちろん、現状から考えてそのようなことを言う人物が現れる可能性は極めて低いとは思いますが、勝手に廃棄するような場合には、町内会員に当該車両に関する情報提供を求め、一定の期間内に所有者情報がない場合には処分する旨を周知したうえで実施する。更には車両を廃棄しても失われる価値がないということを査定しておくというように、リスクを低減するような措置を講じたうえで行うべきでしょう。
仮に、持ち主が現れた場合、処分した後に処分費用を請求することや、この車が原因で怪我をした場合に被害者が所有者に治療費を請求することは可能です。
友人が写った写真をホームページに載せてしまった責任は?
インターネットのホームページをつくりました。
「自己紹介」のページに自分の写真を載せたのですが、一緒に仲のよいふたりの友人が写り込んでいます。ひとりはパソコンを持っており、偶然私のページを見つけたようで、事後承諾の形で「載せてもいい」と言ってくれました。もうひとりはパソコンを持っていないので、先日電話をかけて説明しましたが、あまり事情が飲み込めていなかったようです。
もし、彼に「載せないでくれ」と言われたら、削除しないといけないのでしょうか。また、今まで載せていたことの良し悪しも問われる可能性があるでしょうか。
ご質問の趣旨は、あなたが自己紹介の写真をホームページに載せた際に、その写真に友人が写っていたけれども本人からは許可を得ていなかったということの法的な意味と、その友人から削除を求められたときの対応ということだと思いますので、順次ご説明します。
まず、この場合の権利関係ですが、たとえ有名人でなくても、他人から勝手に写真を撮られることや、自分の過去の写真や私生活面での写真が勝手に他人の目にさらされることに嫌悪感を覚えることは理解できると思います。そのような個人に関する情報をみだりに収集されたり、公開されたりしない権利は、憲法13 条の幸福追求権に由来する権利として、判例上も認められています。そして、自分の容姿をみだりに撮影されたり公開されたりしない権利は「肖像権」といわれ、その侵害については、法律で明確に定められてはいませんが、これまでの裁判の中で、肖像権侵害を不法行為として損害賠償が認められた例もあります。
肖像権の侵害は、相手が著名人である場合だけでなく、友人や知人、旅行先で撮った写真の中に偶然写っている人物に対しても発生する恐れがありますので、いくら親しい友人だからといって無許可、無断で顔写真を記載することには注意が必要です。本件についても肖像権の侵害として法的に責任を取らなければならない可能性があるということは理解しておいていただく必要があります。
したがって、ご質問の場合も、ご友人が事態を理解してホームページ上への掲載を拒否した場合には、その友人が写っている部分は削除する必要があるといえます。
仮に削除を怠った場合の制裁としては、刑事責任を問われることはないとしても、民事上の不法行為責任として損害賠償をしなければならない可能性があります。損害賠償責任を負うか否かについては、社会通念上そのような写真をホームページに掲載されることについて、精神的苦痛を抱くかどうかということが判断基準となり、他人が自分を紹介するためにホームページに掲載した写真に偶然友人として写っていたという程度で損害賠償責任が発生する可能性はほとんどないと思いますが、そのことを掲載された本人が嫌がっており、その意思を明確に表明されたにもかかわらず抹消に応じないということであれば、権利侵害の程度が大きいことになりますので、損害賠償責任が肯定される可能性も否定できません。したがって、ご友人が明確に掲載を拒否している場合には速やかに削除に応じるべきでしょう。
また、これまでホームページに掲載していたことについて、法的に何らかの責任を負う場合があるかという点については、心配する必要はないといえます。先にご説明したとおり、友人の写っている写真はあくまでもあなた自身を紹介するために掲載した写真であり、偶然その写真に友人の肖像が写っていたとしても、社会通念上そのことで精神的苦痛を被ると判断される可能性は窮めて低いといえるからです。
ただ、現代は、個人の私生活分野に対する権利意識は以前と比べて格段に高まっていますから、今後、他人が写っている写真を公開する際には必ず本人の了解を取らなければならないという社会常識が形成されるようなことがあれば、その後に無断で友人が写っている写真を公開することが法的に非難される可能性がないとはいえませんので注意は必要でしょう。
また、法的に問題がないからといって、他人の写った写真を無断でホームページに掲載することはマナー上問題がないということにはなりません。やはり、これからは、このような写真をホームページに公開する場合には、被写体となったご本人の了解を事前に得ておく必要があるといえるでしょう。










