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更新料の有効性(京都地裁平成20年1月30日判決)
2008年03月18日[ 不動産賃貸借 ]
平成20年1月30日、京都地方裁判所が更新料の法的性質と更新料を支払う旨の約定の有効性について判決を下しましたのでご紹介します(以下ではこの判決を「本件判決」と言います)。
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- 更新料とは
- 更新料とは、賃貸借契約の更新に際して、賃借人から賃貸人に支払われる金員をいいます。その法的性質については、過去の裁判例において、賃料の補充や異議権放棄の対価、紛争解決金などと説明されてきました。
- 問題となったのは、居住用、202号室、賃料4万5,000円、礼金6万円、1年更新、更新料10万円という物件です。原告(賃借人)は被告(賃貸人)との間の賃貸借契約に基づき、過去5回契約を更新し、更新料50万円を支払いましたが、かかる更新料支払の約定は消費者契約法10条又は民法90条に反し無効であると主張して、支払済み更新料の返還を求めました。
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- 更新料の法的性質
- 本件判決は、更新料の法的性質について、一般的には①賃貸人の更新拒絶権放棄の対価、②賃借権強化の対価、③賃料の補充という複合的性格を有しているとしながらも、本件においては、①及び②の性質は希薄であるとして、③賃料の補充という点を重視しています。
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- 「賃料の補充」ということの意味
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過去の裁判例における「賃料の補充」の意味は、更新料が、もともとは、賃貸借期間が長期にわたる借地契約において、地価の高騰を原因として、高騰した地価に対応した賃料の補充的なものとして発生したという沿革を背景に、賃貸借期間が長期で、かつ、その期間中賃料相場が増額していくといった事情がある場合に、将来生じる賃料の不足分を予め更新料という形で補っておくというものでした。
このような意味での更新料は、賃貸借期間が短期の場合や今日のように不動産価格が下落した状況には妥当しないといえるため、判例及び学説において、その正当性が疑問視されてきました。
他方、本件判決は、従来の裁判例とは異なり、賃貸借期間の長短や地価変動の有無とは関係なく、賃貸借契約を締結した当事者の合理的意思解釈から、更新料を、使用収益に伴い賃借人が賃貸人に対して支払うことを約した「経済的出捐(しゅつえん)」であるとしました―つまり、賃借人は、賃貸借契約を締結するにあたり、複数の物件について、賃料、更新料を含む経済的な出捐を比較検討し、他方、賃貸人は、契約1年目は礼金と1年分の家賃合計60万円の売上を予定し、2年目以降は更新料と1年分の家賃合計64万円の売上を期待している―このような両当事者の意思を合理的に解釈すると、更新料は賃料と同じ性質を有し、支払う時期・方法が異なるだけであるとしたのです=賃料の一部前払い(「賃料の補充」)。
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- 消費者契約法10条と民法90条
- 消費者契約法10条は、民法等の任意規定(当事者がその規定と異なった特約をすることが認められている規定のこと)に比べ消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する条項で、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効とする規定です。また、民法90条は、暴利行為等の公序良俗に反する行為を無効とする規定です。
本件判決は、①更新料が過大でないこと、②更新料約定の内容が明確であり、かつ、賃貸借契約時、仲介業者が賃借人に対し、更新料約定の存在及び更新料の額について説明を行っており、賃借人に不測の損害や不利益は生じないこと、③希薄ながらも更新料が更新拒絶権放棄の対価及び賃借権強化の対価としての性質を有していることから、本件更新料約定は、消費者契約法10条に反しないとしました。また、前述のような更新料の法的性質や更新料の額から、民法90条にも反しないとしています。
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- 「更新料」という名の「賃料」?
- しかし、更新料が賃料の一部であるとするならば、では、なぜ「賃料」として(上乗せして)受け取らないのか、「賃料」名目で受け取る金銭の額は安く抑える一方、「更新料」という名目で受け取ることは、契約の相手方に誤解を与えるのではないかが問題となります。本件判決はこの点について、報道等により消費者が更新料の性質について認識を深めていくことが考えられること、競争原理による更新料の健全化が期待できること、本件においては、仲介業者により更新料に関する説明が十分に行われていたこと等から、無効とまでは言えないとしました。
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- 本件判決の射程
- 本件判決はあくまでも地裁レベルのものであり確定もしておらず、今後の高裁の判断が待たれるところです。また、当事者意思の合理的解釈を理由に更新料の法的性質を導いた本件判決の論理は、更新料を取ることが商慣習として根付いている京都という地域の特性の影響を受けていることは否定できません。更新料を全く取らない地域があることも考えれば、「更新料も賃料と同様に賃貸借に伴う経済的出捐として物件選択の判断の一要素となっている」といえない地域も少なくないでしょう。さらに、本件判決においては、かかる商習慣の存在を前提とした上、更新料の存在及び額について、仲介業者から十分な説明がなされていたことも重視されています。以上からすれば、本件判決の射程はかなり限定される可能性があるといえるでしょう。










