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介護事故の難しさ(1) - 具体的な事例を基に考える
2011年06月06日
弁護士登録をして以来、高齢者の方の法律問題について積極的に取り組むようにしています。中でも、介護施設等で発生する介護事故については、施設側、ご利用者側双方から数多く相談にのり、訴訟事案も担当してきました。
介護事故と一口にいっても、介護の現場は、在宅、施設に入所している場合では全く異なりますし、また、施設についても、それが老人保健施設なのか、グループホームなのかなど施設の種類によっても全く異なります。また、各施設をとりまく厚生労働省令等の関係法令もそれぞれ異なることから大変複雑になっています。
そういうこともあってか、介護事故は難しい分野である、と言われています。私自身もそのように感じることがあります。
では、介護事故は実際には何が難しいのでしょうか。以下のような事例をもとに施設側、ご利用者側それぞれの立場にたって考えてみます。
「特別養護老人ホームに入所されていた90歳のおばあちゃんAさんは、要介護3の認定を受けていて、認知症は進んでいましたが、杖をつきながら歩くことはできていました。Aさんは、過去に施設で転倒して手を骨折したことがありました。ある日、Aさんは、1人で廊下を歩行訓練していた最中に転倒しました。そして、右大腿骨骨折の複雑骨折をしていたことが判明したことから、Aさんはそのまま病院に入院し、その後寝たきりの生活となりました。それから半年経過した後、入院中に肺炎を併発し、死亡しました。」
この事案で大きく問題になりうるのは、
- 当事者 ― 誰が誰との間で示談をするのか
- 責任 ― 施設側に法的な責任が存在するのか
- 損害 ― Aさん側に発生した損害とは何か
- 因果関係 ― 施設側に責任があり、Aさん側に損害が発生しているとして、どの範囲で責任が発生するのか
の4点であると考えますので、この4つについて順をおって検討していきます。
今回は、1.の当事者について、施設側から見た注意点を簡単にお話します。
Aさんが施設側に対し有している損害賠償請求権は相続されていると法的には考えられますから、結論として、施設側は、Aさんの相続人全員との間で示談をする必要があります。
例えば、Aさんのご長男が代表してお話を進める、ということもあるかと思いますが、ご長男との間だけで話を進めて示談をすることは適切ではありません。施設側としては、Aさんに相続人が全部で何人いるのか、代表のご長男の話が相続人の総意であるのか、という点は十分に確認をしながら話を進めることが必要です。ご長男との間だけで示談をした後、他の相続人である次男の方が示談に反する意向を示したなんてことも十分にあり得ます。その場合には、示談が無効なものとなってしまう可能性もありますので十分に注意をしてください。
私が記事を担当する回において、次回以降、何度かにわけて、2. の責任、3. の損害、4. の因果関係について、施設側から見た難しさ、逆にご利用者であるAさん側から見た難しさについて考えていきたいと思います。










