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介護新聞・さらに一言(第3回)

2010年07月08日

弁護士 石川 和弘
弁護士 福田 直之

介護新聞第3回の記事でご紹介した裁判例は、名古屋地方裁判所一宮支部における平成20年9月24日付の確定判決です。

これは原告である亡Aさんの両親にそれぞれ1016万円の損害賠償が認められた事案ですが、今回は、損害額に着目してお話しします。

この判決で認められた損害の内訳は以下のとおりです。

  1. 死亡慰謝料 1800万円
  2. 両親の固有の慰謝料 それぞれ300万円
  3. 葬儀費用  140万円

以上によれば、亡Aさんを相続した原告の両親にはそれぞれ1270万円の損害賠償請求が認められるところ、亡Aさんの祖母の指示があったことにより誤嚥の認識ができなかったことを考慮し、亡Aさん側の過失として過失相殺2割を減額して、それぞれに1016万円の損害賠償請求が認められたものであります。

この損害額の認定から2点お話します。

1 逸失利益が認められなかった点について

逸失利益とは、簡単に言えば、死亡により得ることができなくなった就労等によって今後得られたであろう利益のことを言います。

健常者の場合は、損害として一般的に認容されるのですが、亡Aさんが重度の身体障害を有しており、その収入として考えられる公的な手当や障害年金は逸失利益には含まれないと判断され、一切逸失利益が認められませんでした。

重度障害者の逸失利益については、裁判所は一切認めてきませんでしたが、昨年、就労の可能性が全くなかったわけではないとして一部逸失利益を認めた全国初と言われる確定判決が出ました(青森地裁平成21年12月25日判決)。

これは以前メルマガ、法律コラムでもご紹介していますので詳細はそちらをご参照ください。
コラム57施設内での事故における逸失利益について

札幌地裁でも重度障害者の逸失利益を一部認めた和解が出たというのが昨年ニュースに取り上げられておりましたし、今後は重度障害者の逸失利益も認められ、ひいては権利擁護がはかられる可能性があると考えております。

2 死亡慰謝料について

無念にもお亡くなりになった亡Aさんの精神的苦痛を金銭評価した場合、本件では1800万円と算出しました。

死亡慰謝料は一般的にも2000万円前後と評価されることが多いです。

要するに、施設側の過失により死亡事故が発生すれば、数千万単位の賠償責任の問題に発展するということです。

このようなことになれば、施設側の経済的な損失が発生するのみならず、社会的にも大きな信用問題に発展し、ご利用者、職員離れをも招くと考えます。

介護施設は、誤嚥事故等、死亡事故の発生リスクを常に有した職場です。それだけ危険と背中合わせな現場であるということを再確認し、気を引き締めて日常の業務にあたっていただければと思います。

本編はこちら (介護新聞 2010年7月8付)
施設における法律問題の勉強会ページはこちら

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