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法律コラム

公訴時効の改正

2010年05月24日

弁護士 野谷 聡子

先月27日、殺人罪の公訴時効を廃止し、傷害致死罪などの重大犯罪の公訴時効期間を2倍にする刑事訴訟法・刑法の改正案が成立し、政府はこれを即日公布、施行しました。改正法が成立後これほどまでに速やかに公布、施行された理由は、今から15年前に岡山県倉敷市で発生した夫婦殺害放火事件の公訴時効の完成が28日午前0時に迫っていたからです。

そもそも最近話題になることの多い公訴時効とは、どのようなものなのでしょうか。

公訴時効とは、検察官が罪を犯した人の責任の有無や内容、程度について審理することを裁判所に申し立てる公訴権を消滅させる制度です。公訴時効は、犯罪行為が終わった時から進行し始めます。その性質については、時の経過によって犯罪の社会的影響が微弱化するからとか、時の経過とともに証拠が散逸し誤判を防止するために訴追を許さないとする必要があるからとか、長期間にわたり捜査等を継続することによる国家の負担を軽減するためであるなど、諸説があります。

今回の改正法は、殺人罪と強盗殺人罪については公訴時効そのものを廃止し、強制わいせつ致死罪、強姦致死罪については従来の15年を30年に、傷害致死罪、危険運転致死罪については従来の10年を20年に、業務上過失致死罪については従来の5年を10年としました。

しかし、時間の経過は、新たな捜査手法の登場により有力な証拠方法が得られる可能性が広がる一方、関係者は年を取り、記憶は薄れ、客観的証拠は劣化し、あるいは、散逸するということが避けられません。

裁判員裁判が始まって1年が経ちましたが、裁判員の苦労や苦悩は日々報道にもあるとおり極めて大きなものがあります。先日は、裁判員裁判において、初めて検察官の求刑を超える期間の懲役刑が言い渡されました。また、死刑が求刑された事件について、裁判員裁判で無期懲役が言い渡されるという事例も出ています。公訴時効が廃止され、また、公訴時効期間が長期化したことにより、場合によっては、裁判員は自分が生まれる前に発生した事件について、審理・判断を求められる可能性も出てきたわけです。時代背景の理解、関係者死亡により直接証言を聞くことが出来ないまま判断を下さなければならない状況、証拠保管体制の不備による証拠の散逸など、裁判員はさらに困難な判断を迫られ、えん罪が増えるのではないかという指摘もあります。

今回の改正による公訴時効の廃止および公訴時効期間の延長は、施行時において公訴時効が未だ完成していない事件についても適用されます。今後の捜査の継続により、過去の未解決事件が解明され、適正な裁判が行われる可能性に期待したいと思います。

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