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施設内での事故における逸失利益について
~平成21年12月25日の青森地裁判決より~
2010年05月10日
1月の勉強会の際に、知的障害児施設における入浴中の死亡事故について、施設側の安全配慮義務違反が認められ、逸失利益も含め賠償責任が認められたという平成21年12月25日の青森地裁判決をご紹介しました。
この度判決の全文を読んだので、改めてメルマガにてご紹介します。なお、安全配慮義務違反等の詳細についてのお話は次回の5月27日の勉強会でお話することとし、メルマガでは逸失利益の点についてご説明します。
今回の事故は以下のような事案でした。
被害者の亡Aさんは、平成15年4月に養護学校の高等部に入学し、関連する社会福祉法人Bの運営する別の学園内にある寮で生活を始めました。
亡Aさんには、自閉症、てんかん、行動障害及び重度の知的障害があり、IQ24と判定されていました。
寮に入ってから1年3ヶ月が経過した平成16年7月、寮の職員であるCさんが他の職員に指示をして亡Aさんを午後3時25分に入浴させました。Cさんは、その後、3時35分、42分ころに浴室に出向き入浴中であることは確認しました。
しかし、Cさんは、シフトの交替時間であったことから、引継ぎの職員に対して亡Aさんが入浴中であることは告げずに、そのまま退勤してしまいました。
その後、間もなくした3時50分ころ、他の職員が浴室内を確認したところ、亡Aさんがてんかん発作を起こして浴槽に沈んでおり、人工呼吸などの措置を講じましたが、既に心肺停止状態であり、搬送先の病院で5時05分死亡が確認されました。
本件では、安全配慮義務違反の点については特に争われておらず、大きな争点は損害額の点でした。
その中で、逸失利益について、一部認める判断をなしました。裁判例で重度の知的障害者に逸失利益を認めたのは全国で初と思われます。
逸失利益を認容した具体的な理由については、大きくまとめますと(1)亡Aさんは16歳であり簡易な作業を行うことや平仮名、片仮名を読むことができたこと(2)亡Aさんが養護学校で教育・生活指導を受けており、卒業時には支援や介助を得ながらの簡易単純な作業に従事するに至っていたと考えられること(3)今後の医療等の発展により、より高度の労働に従事できるようになる可能性があること、などをあげております。
その上で、一般の健常者と同程度の収入を得ることはできなかったにしても、支援や介助を受けながら、平成16年当時の青森県の最低賃金レベルで1日8時間、月20日程度の労働はできたであろうとして基礎収入を算定し、生活費に費消する生活費控除率を7割と認定して、逸失利益を約603万円認容しました。
この裁判例は、上記(1)(2)の点にみますと、亡Aさんが既に16歳であって就労できる可能性がある能力を身につけることができていた、ないしは身につけることが予想されていたことから、本件に限って逸失利益が認められたとも考えられますし、(3)の点にみますと、重度の知的障害者全般に広く認めうるものであるとも考えられます。
ですので、例えば、年少の重度知的障害者の事故で逸失利益が認められるか、といった点についてはまだまだ判断がわかれるところかと思います。
この裁判例は確定しましたが、これに追随する裁判例がどのように展開するか今後も注目していきたいと思います。










