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法律コラム

重度障害者の逸失利益について

2010年01月25日

弁護士 福田 直之

この1年あまり、高齢者・障害者施設の担当者向けの勉強会を実施させていただいており、施設における事故の裁判例の分析等を行っております。

その中で、昨年末の平成21年12月25日、青森地方裁判所において、重度障害者の逸失利益を認めるという重要な判決がありましたので、判決の全文はまだ入手できておりませんが、現時点で判明している限りでご紹介します。

事案の概要は、社会福祉法人が経営する特別支援学校に通う重度の障害をもった16歳の男の子が、入寮していた寮内の浴室で入浴中にてんかん発作をおこして溺死をしたことから、施設側に適切な見守りを怠ったという安全配慮義務違反が存在したとして、遺族であるご両親が損害賠償請求を求めたというものです。

判決では、施設側の安全配慮義務違反を認めた上で、16歳の男の子の逸失利益として600万円を認めました。

詳細については、判決の全文を入手してから機会があればご紹介しますが、概要としては、障害者への理解が進み、社会状況が変化し就労機会が増えつつあり、故人の作業能力等からも考えれば、故人には障害をかかえながらも、最低賃金相当額の収入をえることはできたというべきと指摘して、青森県の最低賃金を基礎収入として67歳までの逸失利益を認めました。

その上で、収入の大部分は介護の付添いの費用等生活費として費消することが想定されることから、その70パーセントを控除して計算して、約600万円を逸失利益として算定しました。

今までの裁判例では、重度の障害者には将来の労働能力を認めることは困難であるとして逸失利益は否定されておりました。

しかし、昨年12月4日には、札幌地方裁判所で重度障害者の逸失利益を認めた前提での和解が成立し、画期的な和解であると新聞等で報道されておりました。

その後、裁判上の和解ではなく、本件は全国で初めて判決により重度障害者の逸失利益が認められたということに先例的な意義があるものです。

そして、この判決は控訴されずに確定したということですので、重度障害者の逸失利益の算定について今後実務にも大きな影響を及ぼす可能性が極めて高いものと考えられます。

今後、障害者の逸失利益の考え方はもちろんのこと、高齢者の逸失利益の考え方にも少なからず影響を及ぼす可能性がありますので、施設関係者の方、保険会社の方などご覧になっておりましたら、この裁判例は頭の片隅においておかれたらよろしいのではないかと思います。

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