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クレームの法的検討2(損害論)
2009年12月22日
今回は、クレームに対して何らかの損害賠償をしなければならない場合にどの程度の損害を賠償する必要があるのかについてお話させていただきます。
クレーマーはこちら側に非がある場合には、ここぞとばかりにあらゆる損害の請求をしてきます。この点、法的には全ての損害について損害賠償義務が発生するわけではなく、責任と相当因果関係のある損害についてのみ賠償する義務があることは前回のメルマガ(No.112)でお話しさせていただきました。
では、相当因果関係が認められる損害については、どのような責任を負うのでしょうか。
損害には、物的損害と人身損害がありますが今回は物的損害についてお話します。
クレーマーの所有物である車を誤って壊してしまったときに、クレーマーが「今すぐに新車と取り替えろ!」というような要求をすることがよくあります。この要求は法的に正当でしょうか。
まず、責任が生じた場合でも現物を用意する必要はありません。法律では、損害賠償は原則として金銭で行うこととされているのです(民法417条、金銭賠償の原則)。もっとも、金銭賠償の原則の例外として名誉棄損における謝罪広告や請負契約における欠陥の修理などはあります。
したがって、壊れたものと同等の商品を持ってくる必要はないのです。
また、金銭で賠償する場合には壊れた車の時価額を支払えば足りるのであって新車価格の金銭を支払う必要はありません。
では、今すぐ支払う義務が発生するのでしょうか。法的には、損害が発生した時点で損害賠償責任が発生するので今すぐに支払う義務があります。
しかし、損害が発生した時点で、責任の有無を直ちに判断できるとは限りませんし、また、損害額もその後の調査(修理費や時価額の算定)によって明らかになる場合が結構あり損害発生時には明らかではありません。
したがって、責任があること及び損害額が確定した後に支払いが行われるべきであってクレーマーの今すぐ支払えという要求に応じる必要はありません。
クレーマーに対しては、きちんと責任の所在と損害額について調査中である旨伝えて、調査を行ったうえでなければ支払えないことを説明してください。それでも、クレーマーが引き下がらず業務に支障が出るような場合には、少し乱暴かもしれませんが、訴訟の提起等の法的な手続を行うよう促してください(なお、訴訟では原則として損害賠償を請求する者に立証責任があります。)。
さらに、クレーマーは「今すぐに支払わないのは誠意が足りない。精神的な苦痛だ!」などということがありますが、支払いが遅れても慰謝料は発生しません。
なお、法的には損害発生時から支払い義務があることから遅延損害金(年5%)の支払い義務が発生するのですが、通常、話し合いで解決する場合には遅延損害金を要求されることはありません。
したがって、損害等の調査に時間がかかってしまい支払いが遅れたとしても遅延損害金が発生することはあっても慰謝料が発生することはありません。
では、クレーマーが「俺の愛車をキズものにしやがって!修理費だけで済むと思うなよ!慰謝料も当然支払え!」などと言ってきた場合に慰謝料を支払う必要があるのでしょうか。
ペット(法律の世界ではペットも「物」です。)が重大な障害を負った事案において慰謝料が認められた裁判例が例外的にありますが、物的な損害に対して慰謝料が発生することはまずありません。
したがって、愛車であっても、愛用品であってもその時価額以上の損害を賠償する責任は基本的にありません。
以上のとおり、物損に関する損害賠償額は、基本的にはその物の時価額若しくは修理費相当額です。物損に関して慰謝料等の請求がある場合には不当要求である可能性が高いと考えてください。
次回は、法的責任に関して損害の金銭評価のうち、人身損害についてお話させていただく予定です。










