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任意後見制度の活用

2009年09月28日

弁護士 仲世古善樹

現在、私は、あるおばあちゃんの成年後見人を務めさせていただいています。その方の年齢は90歳を超えており、私の事務所がある札幌市からは少し離れた町にある施設に入所されています。私はそのおばあちゃんの後見人なので、おばあちゃんの一切の財産をお預かりしており、必要な支払をしたり、おばあちゃんに必要なお小遣いをお渡しするなどの業務を行っています。

でも、お恥ずかしい話、私はまだそのおばあちゃんにお会いしたことがありません。

私がお預かりしている財産は、おばあちゃんが、すでに亡くなったご主人と共に、長年かけて築き、そして守ってきた大切な大切なものだと思います。ですから、おばあちゃんは、本当は、これまでの自分の苦労を少しも知らない私のような者に財産を管理させることなんて望んでおらず、自分がもし判断能力が衰えた場合には「この人に任せたい」と考えていた人がいたのかも知れません。今となってはおばあちゃんの本当の気持ちを知ることはできませんが、私は、後見人としての仕事をするとき、時々そんなことを考えてしまいます。

「100歳以上の人口が4万人台に」「女性の4人に1人、男性は5人に1人が65歳以上」、敬老の日の前後にこんな報道がなされていました。人が皆平等に年をとり、皆が体力だけでなく判断能力も減退する可能性を持っている以上、判断能力が十分にあるうちに、その能力が十分でなくなってしまったときに大切な財産をどう管理していくのか、について考えておく必要性は非常に高いと言えます。

この点で、現状あまり普及していない任意後見制度は、もっともっと活用されてよいのではないかと思います。

私はおばあちゃんの意思とは関係なく裁判所によって選任された後見人であり、その代理権の範囲等も法定されていますが(「法定後見」と言います。)、任意後見制度は、自分が選んだ人(任意後見人)に自分が任せたい事務を委任するもので、判断能力が十分ときの自分の意思を、判断能力が衰えた場合の将来の自分に及ぼすものといえ、本人の意思の尊重・自己決定権の尊重という趣旨が徹底されています。仮にあなたの親族等から法定後見の申立がなされても、原則として任意後見が優先します。

委任する事項は、財産管理(預金や不動産の管理等)だけでなく介護等の福祉サービスの利用契約の締結や病院との医療契約の締結などの療養看護に関するものなど多岐にわたるのが通常であり、まさに自己の老後の基本的な形を自分で決する制度と言えます。

また、任意後見においては、複数の人にそれぞれ異なる分野を担当するようにしておくこともできますし(財産管理は弁護士、身上監護は社会福祉士とう事例もあるそうです。)、複数の人に同一の事務を委任することもできます(任意後見契約は「公正証書」によって契約書を作成しなければならないのですが、前者の場合、各後見人との間で別個の公正証書の作成が必要です。また、後者においては1通の公正証書でよいのですが、複数の後見人が各々単独で代理権を行使するのか、共同で行使するのかを公正証書に記載することになります。)。

さらに、ここで述べている任意後見契約は、いわゆる「将来型」任意後見契約(将来自己の判断能力が低下した(認知症)とき、受任者に、家庭裁判所の選任する任意後見監督人下で、任意後見人として財産管理等の事務処理をしてもらう形態の委任契約)ですが、「移行型」任意後見契約というのもあります。これは、契約締結時から受任者に財産管理等の事務を委任(この部分は通常の委任契約)し、自己の判断能力の低下後は家庭裁判所の選任する任意後見監督人下で、任意後見人として事務処理をしてもらう旨を委任(この部分が任意後見契約)する複合形態の委任契約です。「現在、判断能力に問題はないけど、身体に障がいなどがあって、なかなか財産管理が十分にできなくて・・・」という方には良いのではないでしょうか。

以上、任意後見制度について簡単に述べさせていただきましたが、「法定」であっても「任意」であっても、後見人が本人のために事務を行うことについては何ら変わりありません。

来月、私は、おばあちゃんに会いに行ってきます。

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