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法律コラム

クレームの法的検討

2009年09月17日

弁護士 田代 耕平

今回は、平成21年6月11に書かせて頂いたメルマガの続きを書かせていただきたいと思います。

クレーマーの要求内容に関して「法的に正当ではない要求」か否かはどのように判断すればよいのでしょうか?

クレーマーの要求内容であっても法的根拠があるか否かは最終的には裁判所が判断するものです。訴訟では双方当事者からの主張及び証拠に基づいて事実を認定しその事実は法律にあてはめて判決を下します(いわゆる三段論法といわれる方法です)。

基本的な思考方法は、クレームとの交渉においても訴訟と同様です。

しかし、訴訟とは異なり、クレーマーは整理された証拠を提出するわけでもなく主張も支離滅裂な場合があります。

また、クレーマーの対応を担当する担当者が必ずしも法律に精通しているとも限らない上にクレーマーは短時間での回答を迫ってきます。

そこで、担当者が注意すべき法的な視点をお話しさせていただきます。

その前提として、相手方の主張・要求をじっくりと聞きとってください(事実確認)。次に、相手方の主張する事実が真実であるかをできる限り確認してください(事実調査)。例えば、対応した従業員からの聞き取りであったり、欠陥商品の現物や領収書の確認などです。(これらの事実確認については、メルマガNO.97でお話ししておりますのでご参考にしてください。)

その上で、相手方の要求に法的な根拠があるのかを判断します。上記①事実確認②事実の調査を行わないと基本的に法的根拠の有無は判断できません。(もっとも、「今すぐ社長が土下座しろ!」などの要求内容が異常なもので、事実確認・調査をするまでもなく明らかに法的根拠がないものもあります。)

それでは、法的責任の有無はどのように判断すればよいのでしょうか?

法的責任を判断するときには、基本的に①責任の有無②損害の有無(金銭評価も含みますが、この点については回を別にしてお話しさせていただきます)③責任と損害との間の因果関係の有無によって判断します。

これらすべてが認められて初めて法的責任が発生します。

まず、損害についてですが、損害についてはクレーマーが積極的に主張してくれるので、本当にそのような損害が発生したかについて調査することが重要な作業となります。

次に、責任ですがこちらに何らかの手落ち(故意・過失)があるかを判断します(もっとも、厳密には瑕疵担保責任などの無過失責任を問われることもあります。そのような場合には商品が通常有すべき性能が備わっているか否かを判断することとなります。)。

最後に、責任と損害との間の因果関係(責任と損害の関連性)を判断することとなります。ここで注意が必要な点は、因果関係とは「あれなければこれなし」(「条件関係」といいます)を意味するのではなく相当因果関係が必要であるという点です。

相当因果関係とは、責任から通常発生する損害か否かの判断です。

つまり、責任があって結果的に損害が発生したとしても、その損害が責任から通常生じる損害でない限りその損害に対する法的な責任は生じないのです。

「風が吹けば桶屋が儲かる」方式(風が吹く→目にゴミが入って失明する人が増える→失明した人が三味線で生計を立てる→三味線が売れる→三味線の材料である猫が減る→ネズミが増えてネズミが桶をかじる→桶の注文が増えて桶屋が儲かる)の因果関係では法的責任は発生しないのです。通常、風が吹いても桶屋は儲かりません。

現在の悪質クレーマーで説明すると、腐ったリンゴをスーパーで購入したために仕事を休んでスーパーまで行って説明したのだから休業損害を払えなどというものが考えられます。

確かに、腐ったリンゴを購入しなければスーパーに説明に行くことはないので条件関係(「あれなければこれなし」)は認められます

しかし、仮に実際にクレーマーの言うとおりに会社を休んでいたとしても、通常腐ったリンゴの説明をするために会社を休む必要はないでしょう。そうすると、腐ったリンゴとクレーマーの休業損害には相当因果関係は認められず休業損害を支払う法的責任は発生しないのです。

このように、たとえ何らかの責任が発生していたとしても実際に生じたすべての損害(支出)を支払う法的な根拠はないのです。

実際の交通事故等の訴訟においても、交通事故と実際に弁護士に支払った弁護士費用全額との間に相当因果関係は認められず、認容額の約1割程度が交通事故と相当因果関係のある弁護士費用(損害)とされます。

以上、法的責任についてお話しさせて頂きましたが、私がクレーマー問題の相談を受けて特に気になるのは相当因果関係という視点が相談者にも欠落している点ですので、皆様も何らかの責任を認めて損害賠償金をお支払する際には責任と損害の間に相当因果関係があるかという点を今一度ご検討いただければと思います。

次回は、法的責任に関して損害の金銭評価についてお話させていただく予定です(特に慰謝料についてお話しする予定です。)。

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