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裁判員裁判スタート

2009年06月02日

弁護士 仲世古善樹

私がこの原稿を書いているのは、平成21年5月21日です。そうです、裁判員制度がスタート(裁判員法の施行)する(した)日です。これから起訴される対象事件は、すべて裁判員裁判によることになり、早ければ7月下旬か8月上旬ころには、裁判員裁判の初めての公判が始まることになると思われます。

そして、裁判員候補に選ばれた方々に対する連絡は、公判の6週間前までにすることになっていますので、昨年の年末に「名簿記載通知(裁判員候補者の名簿に記載された方に対し、その旨を通知する文書)」が届いている方は、早ければ来月の初めころにも「呼出状(具体的な事件について裁判員候補者に選ばれたことと選任手続きの日程のお知らせ)」が送られてくるかもしれません。

いよいよ裁判員制度がスタートするということで、ここ最近は、ニュース番組などでも裁判員制度に関する特集を組み、制度説明や刑事裁判の仕組み、これまでの刑事裁判の問題点など、刑事裁判に纏わる話題を多く取り上げていました。皆さんもご覧になったことでしょう。

その中で、多くの方が気にされている事は、どの番組でも取り上げていることですが、「どういう場合に辞退できるのか。」、ちょっと言い方を変えると、「何とか辞退できないものか。」ということでした。私も、法曹関係以外の友人や親族らから、「なんでこんなこと始めるんだ!」「なんでこんなことしなきゃならないんだ!」等々、別に私が裁判員法を作った訳でもないのに、謂れのない苦情を受けてきました。もっとも、そう言いたくなる気持ちは、よく分かります。

批判の理由は様々ですが、「専門的知識のない人に、たくさんの証拠をもとに、事実認定などの判断なんてできない。」というのもありました。

でも、大丈夫です。裁判員に選ばれたとしても、決してあなた一人で判断するのではありません。3人の裁判官や他の5人の裁判員と一緒に考えていただければいいのです。

また、犯罪の証明は検察官の役割であり、皆さんは、検察官の証明に「合理的な疑いを差し挟む余地はないのか?」を検討していただければよく、検察官の証明が十分でないとなったときに「真犯人は誰か」とか「真実はどうだったのか」という点まで考える必要はありません。

「合理的な疑い」ということを感じとっていただくのに適した判決が最近出ていました。

その事件は、帰宅中の女性(当時21歳)の身体を触ったとして40歳の男性が強制わいせつ罪に問われたものです。判決は、5月19日にあったのですが、裁判長は「事件当時の被告人の髪形と被害者が目撃した犯人の髪形には看過できない食い違いがあるなど、被害者の犯人識別供述には信用性がない」として、無罪を言い渡しました。

判決によると、被告人は平成18年11月4日午後6時すぎ、福岡市西区のマンション1階の郵便受け付近で、帰宅中の女性の胸や尻などを触ったとして起訴されたのですが、被害者は、犯人の髪形が真ん中分けであることを明確に記憶していたところ、犯行時刻直前に被告が買い物をしたスーパーの防犯ビデオでは被告人の髪形はリーゼントだったそうです。さらに、スーパーから現場に到着できる時刻から犯行開始までに1、2分しか間がないとう事案でした。

判決では、髪形を変える時間などなかったのでは・・・という問題を指摘していたそうです。これが「合理的な疑い」だったのです。

余談ですが、この事案、もしも、被告人の部屋からリーゼントのカツラでも見つかっていたら・・・・・、有罪になったのかもしれないですね。

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