重要法案提出の動向
2009年04月07日
民主党・小沢代表の違法献金疑惑事件を受け、これまで支持率低迷に喘いでいた麻生総理が攻勢に転じようと春頃の衆議院解散に踏み切るのではないか、と目されているようです。解散の時期がいずれになるにせよ、有権者にとっては、政策本位の選挙戦を期待したいものです。
ところで、このような緊迫した政治情勢が続く中、あまり大きく報じられないものの、相次いで重要な法案が提出されようとしています。そこで、特に私が関心を持っている分野に関して、法案提出の動向をご紹介したいと思います。
・不動産任意売却促進法案(平成21年3月17日付読売新聞等)
通常、借金を返せなくなった借り手が担保不動産を売却しようとしても、一部の担保権者が反対した場合には、売却できません。反対する担保権者の担保権が物件に付いたままでは、買い手がつかないためです。
これまでこのようなケースへ対処するには、競売手続に付す他なかったのですが、手続き終了まで約10か月間もかかるうえ、その間に物件の価格が下落する危険も生じます。そのため、担保権者になることが多い金融機関や、土地取引の活発化を望む不動産業界から、制度導入を求める声が上がっていたもので、この制度が構築されれば、早ければ3か月程度で抵当権の抹消が完了することになります。
その具体的な仕組みは、不動産売却に同意した担保権者が抹消の許可を裁判所に請求し、その後1か月以内に、売却に反対する担保権者が、①競売を申し立てない②売却予定代金に5%上乗せした金額での買い取りを申し出る新たな売却先を見つけられない、のいずれかの場合、裁判所が抵当権の抹消を認める、というものです。
担保物件売却による返済金は、上位の担保権者から順に得ることができるため、下位の担保権者が返済金を取得するケースはほとんどありません。このため、下位者が抵当権抹消に反対し、売却同意の見返りとして債務者らに法外な金額(実務上、「ハンコ代」等とも呼称される)を要求するケースがあり、この法案に基づく新制度は、これを防ぐ効果もありそうです。
・特許を巡る紛争の処理迅速化に向けた法改正
未だ法案提出の目処が付いた訳ではありませんが、昨日、政府が特許紛争のダブルトラック問題を解消する法改正に着手した旨の報道がありました。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090405AT3S0401J04042009.html
簡単に説明しますと、既に成立した特許を無効とすべき事由がある場合には、特許庁に対し、特許無効審判(特許法123条)を申し立てることが出来るのですが、他方、裁判所に申し立てる特許権侵害訴訟においては、平成12年のキルビー事件判決以前、「裁判所は、特許の無効理由を判断できない」との判例理論が定着していました。しかし、同事件での判例変更を受け、平成15年特許法改正により、特許法104条の3第1項に「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない」と規定され、侵害訴訟内で特許の無効理由を判断できるようになりました。
そのため、「裁判所での訴訟と無効審判の両方で特許の有効性が争われ、判決と審判の判断が対立するケース」が生じうるようになったのです。
この問題に対しては、知財高裁の判事が「新制度では、特許権者は被告から特許の有効性を争われると、裁判所と特許庁の両方で認めてもらわなければならない。結果的に、被告にとって非常に有利な制度になったといえる」「特許権者と第三者の利益のバランスを図って、公平なものにするためには、特許庁と裁判所のダブルトラックによる紛争解決制度を見直すべきだ。例えば、(1)無効審決の効力は、既に確定した特許権侵害訴訟の被告には及ばないようにする、(2)一定の期間後の無効審判請求を制限する、などの制度変更が考えられる」等と、法改正の内容に踏み込んだ異例とも思えるコメントを出すほどでした(平成21年1月12日付日経新聞朝刊より)。
特許権者が(無効審判に対する)応訴の負担を考慮して、権利主張を躊躇している現状があることを前提に進んでいる議論のようですが、特許権者の不当な権利行使を助長するシステムに成らないか、という危惧もあるところです。
特許法の更なる大幅な見直しが取りざたされている昨今、どのような方策が審議されるのか注目していきたいと思います。










