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法律コラム

クレーマー対策マニュアル5

2009年02月24日

弁護士 田代耕平

それでは、前回に引き続き ① 誠実な対応、② 事実・要求内容の確認方法、③ 明らかな不当要求に対する類型的な回答方法 ④ 警備会社・警察へ連絡のタイミング及び方法のうち、今回は②についてお話したいと思います。

まず、② についてですが、この点についてはこのメルマガでも何度かお話しさせていただいてきているとおり、相手方の主張内容を5WH1(いつ・どこで・だれが・何を・なぜ・どのように)で把握するということにつきます。

したがって、組織内のマニュアルにもこの点を明記すべきです。

そして、マニュアル作成の際には。この5WH1による事実確認によって、 (1) 相手方はどのような属性の人物であるのか(連絡先がわかるのか・暴力団関係者か) (2) 相手方の主張する事実は何なのか(例えば、どこどこの店で何日に当社の商品を購入して食べたら食中毒になったなど) (3) 相手方の主張する事実を前提に相手方は何を要求しているのかを確認することが肝要であることを記載してください。

当然、この確認の際にはメモ・録音等の記録を心がけることも明記してください。また、記録は報告書等によって組織内で情報を共有化しなければならないことはすでにこのメルマガで述べてきたとおりです。

ここで、上記 (1) ~ (3) について付言します。上記 (1) を確認することは相手方がクレーマーでなくても当然のことです(連絡先がわからない人物とは交渉はできません。氏名や連絡先を言わない相手方の発言はアンケートの回答と同じです。)。

クレーマーの場合には特に気を付けて確認しなくてはならないのは (2) と (3) です。

(2) の確認の際には、できるだけ後に客観的な証拠によって確認が可能であるか否かを意識して聞き取るようにマニュアルで指導してください(例えば、相手方が主張する商品は現存するのか。レシートはあるのかなど)。

(3) は特に注意して聞き取り、相手方が要求を明確にしない場合には要求させるようにマニュアルで指導してください。クレーマーは、積極的・具体的に要求をしないことが多いのです。クレーマーは自己の主張要求が正当ではなく法的に認められないことを知っているからです。したがって、クレーマーは「誠意を示せ」などの曖昧な要求をするのです。

しかし、要求をしない相手方は、 (1) の連絡先がわからない相手方と同様に相手方と交渉や対応ができません。そこで、相手方に要求をさせることが必要となるのです。

また、逆に明らかに不当な要求をする相手方もいます(例えば、「当社の商品を食べてお腹をこわしたために10億円の商談を逃したから、10億円の損害を賠償しろ!」)。このような相手方(要求内容が異常)はクレーマーです。したがって、その後はクレーマーとして対応を行えばよいのです(要求に応じない)。

このように、相手方の要求内容を確認することは相手方がクレーマーであるかを見極めるためにも必要なのです。

ここで、なぜ、5WH1によって事実及び要求内容の確認が必要であるかを法律的に説明します。

クレーマーの要求の多くが金銭的要求です。法律的にはクレーマーは損害賠償請求をしていることになるのです。

損害賠償請求が認められるためには、 ア. 相手方に損害が発生していること、 イ. 損害の発生についてこちら側に責任があること(ここでは製造物責任等の特別法は考えません)、 ウ. こちら側の責任と相手方の損害の間に相当因果関係があることが必要です。

事実確認はア. ~ ウ. の要件が認められるかを確認するために必要なのです。事実確認によって ア. ~ ウ. が認められない場合には法律的には相手方の要求に応じなくても良いのです。

たとえば、上記の「当社の商品を食べてお腹をこわしたために10億円の商談を逃したから、10億円の損害を賠償しろ!」という要求について考えてみると、事実確認後の証拠によって10億円の商談がないことが判明したときは要求に応じる必要はありません。

また、たとえ10億円の商談が真実であったとしてもその損害と会社の責任との間には相当因果関係(原因となった行為から通常生じる損害であること又は予見可能性のある損害であることをいいます。)がないのですから、これもまた要求に応じる必要がないのです。

このように、事実・要求確認は損害賠償責任が認められるかという法律の要件のあてはめ作業に必要なのです。

逆に言うと、法律の要件も5WH1によって構成されているのです。

以上、今回は ② 事実・要求内容について述べましたが、次回は ③ 明らかな不当要求に対する類型的な回答方法についてお話したいと思います。

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