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弁護士野﨑の「気になる判例」
2008年10月07日
『売買契約後に判明した土壌汚染が「隠れた瑕疵」に該当すると判断された事例』
東京高裁は、本年9月25日、土地の売買契約時には無害とされていた土中のフッ素が、平成3年の契約時から12年後に有害として法規制されたため、買主が売主に汚染除去費を請求した訴訟において、「後から有害物質として法規制された場合も売主は除去費を負担すべきだ」と判断し、買主側敗訴の1審・東京地裁判決を変更し、売主側に約4億4800万円の汚染除去費用の支払いを命じる判決を下しました。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080926AT1G2504H25092008.html
民法570条により、売買の目的物に「隠れた瑕疵」がある場合には、損害賠償請求(瑕疵により、契約の目的が達成できない場合には契約解除も可能)とされています。
瑕疵とは(厳密には同義でないものの)「欠陥」と考えていただいて結構です。また、「隠れた」とは、買主の善意・無過失、つまり買主が瑕疵の内容を知らず、また、通常の注意義務を尽くしても瑕疵を発見できなかったことを指します(法律用語では、「善意」とは知らなかったこと、「悪意」とは知っていたことを意味します。分かりにくいですね)。
売買契約時には、無害とされていたのですから、当然、契約当時に買主が「悪意・有過失」だったことは考えられず、「隠れた」という要件は満たすのでしょう。しかし、契約当時は、「瑕疵」とは言えなかったはずではないのか、と違和感を覚える方が多いのではないでしょうか。
また、法律家としては、「消滅時効」に関する最高裁判所の判断に抵触しないのかという点にも違和感があります。
瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権については、買主が「事実を知った」日から1年という除斥期間の定めがあるのですが(民法570条、566条3項)、買主が当該土地のフッ素含有量が法規制の基準を超えているという事実を知って1年以内に、損害賠償を請求していれば、上記の定めには抵触しません。
他方、損害賠償請求権も「債権」ですので、上記除斥期間の規定とは別に、一般の消滅時効(時効期間は「権利を行使することができる時」から進行し、10年間権利を行使しないときは消滅する)も適用されるというのが最高裁の考え方です。
ところで、前記のとおり、平成15年に高濃度フッ素が有害物質として指定されているわけですから、この有害物質指定以前に損害賠償請求権を行使することは事実上不可能です。そのため、本事案では、損害賠償請求権の消滅時効の起算点を平成15年と考えるべきではないかとも思われます。
しかし、最高裁は、消滅時効の起算点については、以下のように判示して、瑕疵を認識できた時点ではなく、あくまでも「引渡を受けた時点」と解しています(少し長いですが、判旨を引用します)。
(最判平成13年11月27日民集55巻6号1311頁)
「買主の売主に対する瑕疵担保による損害賠償請求権は、売買契約に基づき法律上生ずる金銭支払請求権であって、これが民法167条1項にいう「債権」に当たることは明らかである。この損害賠償請求権については、買主が事実を知った日から1年という除斥期間の定めがあるが(同法570条、566条3項)、これは法律関係の早期安定のために買主が権利を行使すべき期間を特に限定したものであるから、この除斥期間の定めがあることをもって、瑕疵担保による損害賠償請求権につき同法167条1項の適用が排除されると解することはできない。さらに、買主が売買の目的物の引渡しを受けた後であれば、遅くとも通常の消滅時効期間の満了までの間に瑕疵を発見して損害賠償請求権を行使することを買主に期待しても不合理でないと解されるのに対し、瑕疵担保による損害賠償請求権に消滅時効の規定の適用がないとすると、買主が瑕疵に気付かない限り、買主の権利が永久に存続することになるが、これは売主に過大な負担を課するものであって、適当といえない。
したがって、瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり、この消滅時効は、買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行すると解するのが相当である」
今回の事案で、売主側はこの消滅時効の主張を行っていなかったのでしょうか?
以上のような疑問点については、判決全文をあたってみないと正確なことは言えません。
今回ご紹介した裁判例は、不動産取引の実務や銀行の担保管理実務にも大きな影響を及ぼすことが考えられますので、詳細が分かりましたら、再度メールマガジン又は当コラムにてお知らせしたいと考えています。










