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法律コラム

生後認知で日本国籍取得

2008年08月26日

弁護士 仲世古 善樹

新聞やテレビのニュースで大きく報道されましたが、今年6月4日、未婚の日本人父とフィリピン人の母との間に生まれ、出生後に認知を受けた計10人の子供が、「生後認知に加えて父母の結婚がなければ日本国籍が取得できないと定めた国籍法は憲法違反である」と主張して日本国籍の確認を求めた訴訟で、最高裁大法廷は「父母の結婚」を国籍取得要件としている国籍法の規定を違憲と判断しました。

結婚していない日本人の父と外国人の母との間に生まれた子について、現行の国籍法では、生まれる前に認知された場合(胎児認知)には日本国籍を取得できる一方、生まれた後に認知された場合(生後認知)には認知に加えて父母が婚姻することが必要とされています。最高裁は、生まれる前と生まれた後でこのような差を設けることは不合理な差別で憲法14条の平等原則に反するとしたのです。

この判決を受けて、政府は、今月、父母の婚姻を国籍取得要件から外し、日本人の親に認知されることだけを要件とする国籍法改正案をまとめました。

最高裁判所がある法律の条項を違憲と判断しても、国会や内閣がこれを改正したり廃止したりする法的な義務はありません。今回、迅速に改正案がまとめられたことは、政府が最高裁の判断を尊重したことの現れといえます。また、法改正の背景には、上記最高裁判決が「父母が婚姻して初めて、わが国との密接なつながりが認められるとの考えは、家庭生活の事態に合わなくなった」と述べているように、親子関係や家庭生活が多様化したことも挙げられると思います。

参考までに、世界的にみて未婚の自国民夫と外国人母の間に生まれた子供の国籍取得について、「父母の婚姻」を要件としている国は日本以外に見当たらないそうです。

では、今回の改正案が国会で可決され、認知のみで子の日本国籍取得が認められるとどのような影響が出るでしょうか。

まず、上記判決が「遅くとも(原告が国籍取得届を提出した)2003年当時には、婚姻要件は憲法に違反するものであった」としたことを受けて、改正案でも、2003年1月まで遡って婚姻要件を満たさなくても国籍取得を認めることを附則で定めるとしていることから、2003年1月以降に認知を受けた子の国籍取得の届出が相次ぐことが予想されます。上記訴訟の原告と似た境遇で日本国内に暮らす外国籍の子は、数万人いるそうです。

また、認知のみを要件とした場合、外国に住む女性が、自らの日本在留資格を得るために、日本人男性に虚偽の認知をさせて子供の国籍を取得するという事態が横行する恐れがあります。これまで、外国人女性が日本在留資格を得る手段をして用いられてきた方法は「偽装結婚」でしたが、今後はその一部が「偽装認知」に変わっていくことが懸念されます。自らの都合のために子供を利用するなどということがあってはなりません。そこで、改正案では、偽装認知に1年以下の懲役か20万円以下の罰金を科すことが盛り込まれました。

もっとも、偽装結婚(正式な犯罪名は、「公正証書原本不実記載罪」)の法定刑が5年以下の懲役または50万円以下の罰金ですので、改正案の罰則が偽装認知の抑止になり得るのかについては甚だ疑問です。将来、新聞等に「国籍法違反で逮捕」などという見出しが多発しないことを祈るばかりです。

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