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民法改正・解説コラム 第2回「売買・請負のルール改正」

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民法改正・解説コラム 第2回「売買・請負のルール改正」

弁護士 石塚 慶如

約束どおりの物ではない!?~売買・請負のルール改正~

1 この改正は誰に影響するの?

今回のテーマは、「売主が約束どおりの物を渡してくれなかった」、「物を作ってほしいとお願いしたのに約束どおりの物ではなかった」というような、売買契約や請負契約に関する民法のルール変更のおはなしです。

売買契約は、車やマンションのような高価な買い物のほか、家具やパソコン、さらには日用品の購入など、毎日のように行っている取引です。また、請負契約は、注文住宅を建てる場面だけでなく、ビジネスでソフトウェアの開発を依頼する場合なども対象となります。

このように、売買契約や請負契約は、実は様々な場面で行われる重要な契約ですので、上記のルール改正は、すべての方にとって重要な改正と言っていいでしょう。

2 約束通りの物を売ってくれなかった場合のルールとは?

<ケース1>
Aさんが中古車販売店Bから中古車1台を30万円で購入したものの、エンジンの調子が悪くすぐに止まってしまうという不具合が発生した。この場合、買主であるAは、販売店Bに対し、どのような請求ができるでしょうか。販売店Bがエンジンを仕入れるには、200万円かかることがわかっています。

影響を受ける人:一般市民、全ての販売店

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(1)修理や代替物の引渡が選択可能に

改正前の民法では、中古車の売買は、「全く同じものは世界に1台もない車」の売買である以上、不具合があっても、買主が別の中古車を引き渡すよう求めることはできないという考え方が有力で、さらに法律上は修理や代金減額も認められないとされていました。

しかし、この考え方が現実の取引と合わないことから、今回の改正により、目的物の種類、品質、数量のいずれかが契約内容に適合しない場合には、①代替物の引渡しや、②修理、③契約解除のいずれかの請求ができ、さらに、④損害賠償請求ができる場合があることになりました。

(2)修理コストが高額なときに売主ができること

改正民法では、売主は、買主から①か②の請求(追完請求といいます)があった場合に、買主の負担が不相当でなければ追完の方法を売主が決められることになっています。

本ケースで、Aさんから「中古車のエンジンを交換して修理してほしい」との請求があった場合、Bは「修理は高額なので別の中古車を手配させていただきます」という応対ができることになりました。

販売店の立場からすると、この知識があるかどうかで修理コストが大きく変わる可能性があります。

(3)販売店が修理してくれない場合には

また、Aさんは、販売店Bに修理をお願いしても応じてもらえない場合などに、⑤代金の減額を求められるようとなりました。この改正により、不適合な商品を巡るトラブルが柔軟に解決される可能性がでてきました。

(4)期間制限に注意!

改正民法では、買主が目的物の引渡を受け、種類、品質の点で不適合商品だと「知ったときから1年以内」に不適合であることを売主に通知しなければ、上記①~⑤の請求ができないことになりました。本ケースの買主であるAさんとしては、引渡を受けたら車を動かしてみて不具合がないか確認し、不具合があれば速やかに販売店Bに伝えることが必要となります。

なお、数量が不適合である場合や、売主が種類、品質の点で不適合商品であると知っていたり容易に知り得る場合には、このような期間制限はありません。

(5)今回の改正のまとめ

今回の民法改正で、買主は、追完や代金減額の方法を利用することで早期解決のための選択肢が広がったといえます。他方で、売主は買主の様々なオーダーに応える必要がありますので、先ほど述べた、売主が追完方法を決定できるというルールをうまく利用して、トラブル時のコストを最小限にすることが重要となります。

3 約束どおりの物を作ってくれなかった場合のルールとは?

<ケース2>
Cさん一家は、D工務店で待望の2階建てマイホームの建築を4000万円で依頼し、完成後に引渡を受けました。しかし、住み始めて約1か月後に床にゆがみがあることに気づき、検査してみたところ、めまいで生活困難な程度のゆがみであることが判明しました。

CさんはD工務店に、「これでは住めないので契約を解除したい」と伝えたものの、D工務店は、「もうこちらの仕事は終わっているので解除はできません」と回答しました。

CさんはD工務店にどのような請求ができるでしょうか。

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(1)改正前民法では原則解除できない!

改正前民法では、本ケースのように、建物などの土地工作物の製作を依頼する請負契約の場合には、建物完成後は契約の解除ができないという特別の規定がありました。その理由は、建物完成後に解除を認めて取り壊すことが社会経済上の損失となり、また請負人に過酷な結果となると考えられたからです。

もっとも、そのような規定がありながらも、裁判所の法解釈によって解除を認めるケースもありました。

(2)改正民法では建物も解除可能に

このような経緯から、建物などの土地工作物を特別に考える必要性はないと判断された結果、他の一般的な契約と同様に、債務不履行が軽微な場合を除き、契約解除が認められることとなりました。

これにより、建築業者は、契約に適合しない建物を引き渡した場合には解除されるリスクが発生しますので、従前に比べて欠陥住宅トラブルに対するリスクが高くなると考えられます。

(3)追完請求や代金減額も可能に

改正民法では、対価性のある取引(有償契約)の場合は原則として同じルールが適用されることとなったため、D工務店が契約に適合しない建物を引渡した場合には、ケース1の①~⑤と同じように、修理などの追完請求ができます。

特に、請負代金減額請求は、今回の改正で初めて認められました。Cさんのような注文者の立場からすると、請求の選択肢が広がったといえるでしょう。

(4)期間制限の変更に注意

改正前民法では、解除や損害賠償、修理の請求は、目的物の引渡を受けたときから1年に制限されていましたが、改正民法では、不適合を知った時から1年とされました。

(5)今回の改正のまとめ

請負契約に関する民法のルール変更は、特に夢のマイホームを建築する契約に大きな影響を与えるものといえます。建築業者だけでなく、マイホームを購入しようと思っている方からしても、民法改正は大きなものになるでしょう。ただ、今回の民法改正によるルール変更は、3年くらい先になる可能性もあります。しかし、事業者の方々にとっては、書式改定や従業員研修の準備などもありますので、既に改正法に合わせた準備を始める頃といえるでしょう。

弁護士 石塚 慶如
弁護士 石塚 慶如

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