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事例で分かりやすく解説 弁護士との連携(第1回)弁護士として福祉分野の活動をしている理由

弁護士ブログ

事例で分かりやすく解説 弁護士との連携(第1回)弁護士として福祉分野の活動をしている理由

弁護士 石塚 慶如

いしづか・やすゆき 札幌市出身。2008年立命館大学大学院法務研究科修了、2011年から札幌総合法律事務所に在籍。

札幌弁護士会法教育委員会で副委員長を務めるほか、高齢者障害者支援委員会委員、北海道身体障害者福祉協会障がい者110番担当、札幌市豊平区在宅ケア連絡会会員、札幌市高齢者虐待専門職チーム所属など、福祉分野での活動も多い。

地域包括支援センター、在宅ケア連など福祉専門職対象のセミナーや市民向け講演活動を多数行う。

『はじめに』

今回から連載を始めさせていただく札幌総合法律事務所所属の弁護士、石塚慶如です。これからどうぞよろしくお願い致します。

介護や福祉の業務をされている方々向けの専門紙に、なぜ弁護士が連載をするのだろうと思われる方もいらっしゃると思います。私自身、介護や福祉の方々と弁護士がもっと一緒に活動すべきであると日々感じています。連載初回である今回は、その理由について、私の経歴とともにお伝えしたいと思います。

『野球好きだった少年時代』

私は札幌市出身で、立命館慶祥高校(江別市)、立命館大学(京都市)、立命館大学法科大学院(京都市)を経て、2009年に弁護士登録をしました。小学校から高校までは野球部に所属していました。仕事の関係で出会った方と雑談で野球の話ができることもまた楽しみにしています。

大学入学後は野球を続けず、司法試験の勉強を始めました。司法試験の勉強を始めたきっかけは、高校時代に弁護士による授業を受けて仕事の面白さを知ったことや、その際に法律の勉強はただ暗記するだけではないと教えられたからです。

皆さんの中には、司法試験は法律を暗記することが重要と思われるかもしれませんが、そのような試験ではありません。実は、論述試験の際には六法が配布されるのです。

では試験で何が問われるのかですが、条文だけではわからない解釈や、判例の知識、事実を法律にあてはめる能力が問われるのです。

そのため、刑法を例にとると、窃盗罪は「他人の財物」を盗んだ際に成立しますが、所持が禁止されている違法薬物を盗んだ場合にも「他人の財物」を盗んだといえるのか、などが出題されます。なお、この回答はどこかでお会いした際にお答えさせていただければと思います。

大学で司法試験の勉強をする中で、早く弁護士になりたいという思いが強すぎたからか、大学を3年生終了時点で中退し、そのまま大学院に進学するということにしました。アメリカなどではよくある飛び級という制度なのですが、私も自分で制度を使うまで、日本に制度が存在すること自体知りませんでした。ただ、この制度を利用した結果、私の経歴は大学中退、大学院修了となっています。

大学院終了後は、無事に1回目の司法試験で合格できましたので、弁護士登録後は、会社の問題、交通事故や相続、家庭問題などの案件に携わっておりました。そのような中で、6年ほど前から福祉の分野の仕事をさせていただくようになりました。

『高齢者虐待問題が福祉に関わるきっかけに』

私が福祉分野の仕事をはじめたのは、弁護士会の活動の一環で地域包括支援センターや市役所の方々と高齢者虐待の問題に取り組み始めたことがきっかけです。虐待問題は主に社会福祉士を中心に研究等が行われていますが、虐待の原因には借金問題や離婚問題など、私たち弁護士が普段行っている業務の知識や経験が役立つと気付くようになりました。そして、福祉職の方々にとってこのような問題が困難ケースとして認識されていることがわかってきました。

特に、財産管理においては、管理に伴う責任が発生する関係上、関係者の多くが財産問題に携わりたくないと考える一方で、日常生活自立支援事業にもなじまない方などの場合、特に債務整理の場面で弁護士が役立つことが多いです。また、経済的虐待での養護者支援において、養護者が多額の負債を抱えているケースでは、まずはクレジット会社への支払を停止した上で養護者に落ち着いてもらい、収入源は生活保護等のセーフティーネットで確保してもらうように実働することもできます。

このような仕事を積み重ねることで、福祉関係者が自身の専門分野に力を注げるように少しでも力になりたい、その結果高齢者本人やその家族の生活が安定してほしいと思うようになりました。

具体的な活動としては、虐待問題への取組のほか、地域包括支援センターの方などと一緒に勉強会を開催したり、講演会を実施したりするなどをしてきました。

講演会のテーマは、高齢者虐待問題のほか、高齢者の財産管理、JR東海最高裁判決の解説、離婚、相続など多岐にわたります。離婚問題などは、福祉の仕事においてあまり関係ないように思われがちですが、例えば認知症の夫による暴力に耐えかねて別居した妻の生活費をどう確保するかという問題は、離婚問題で弁護士が頻繁に関与する「婚姻費用」(別居している妻が収入のある夫に対して請求できる生活費のこと)をどう考えるかという問題につながります。

なお、この金額は裁判所や弁護士会から一定の基準が示されておりますので、これについては後日お伝えできればと思います。

『何がベストであるかを共に考えたい』

これからの連載は、私が関わってきた高齢者虐待の対応に関する問題のほか、福祉職の方が知っておくべき知識や判例などをお伝えできればと思います。

福祉職の方々からすると、専門分野以外の法律はなじみが薄いかもしれませんが、知っているだけで考えの幅も広がり、法律と福祉の専門職が、より明確な役割分担のもとでそれぞれの専門的知識や経験を発揮できるのではないかと思っています。

また、私たち弁護士の業務は、何が真実であるかわからない中で真実と思われるものを探していくような作業です。例えば、一方では「お金を貸した」と言っているのに、借りたと言われた相手は「もらったものだ」ということはよくあることなのです。このように事実が何であるかわからない中で、正当で納得できる解決ができるようにするのが弁護士の一つの役割です。

福祉職の皆様も、日々の業務において、高齢者本人や家族にとって何かベストであるかわからない中で決断しなければならないという意味において、私たちの仕事と非常に似ているところがあると思います。その中で、法的な考え方を知り新たな発見をしていただけるのであれば、福祉職と法律家が一緒に仕事をする意味もわかっていただけるのではないかと思っています。

そして、もし何か困ったことがあれば、実際にその課題に対して一緒に取り組ませていただければと思っています。どうぞよろしくお願い致します。

※本稿は「介護新聞」にも連載されています。

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弁護士 石塚 慶如
弁護士 石塚 慶如

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